No title

 19世紀の英国で蒸気機関を用いた大規模な機械化により「産業革命」が起こった。それはたちまち欧州大陸や新興国の米国の産業を一変させた。機械化された生産設備による大量製造を可能にするため、欧米諸国は「帝国主義」によりアフリカやアジアを原材料の供給基地として現地労働者を使役し搾取した。
 明治四年に仏国が日本政府に製糸産業の共同経営を持ち掛けてきた。それまで日本の生糸は生産量は少ないが丁寧な仕事で欧州社交界で広く知られていた。

 明治政府で交渉にあたったのは伊藤博文だった。彼は「共同経営」を持ち掛けてきた仏国の申し出を断り、日本独自で近代的な製糸産業を興すことを決断した。それが今度世界遺産となった官営工場・富岡製糸工場が明治五年に建設される端緒となった。
 伊藤博文は幕末の文久三年から一年間、英国へ井上馨たちと密留学している。そこで産業革命を果たした英国社会を見聞した。1860年台の英国社会がいかなるものだったか、説明するまでもないだろう。弱肉強食の「原始資本主義社会」で資本家が労働者を牛馬のように使役していた。

 伊藤博文は仏国の駐日大使に然るべき技師を日本に招聘して製糸工場の設計から機械導入、職工の教育などを任せられる人物を依頼した。仏国大使が照会してきたのはポール・ブリューナという仏国で技師として働いていた人物だった。
 伊藤博文(大蔵少輔)は大隈重信(同じく大蔵少輔)や渋沢栄一(租税正)や尾高惇忠(庶務小佑)たちとプロジェクトチームを組んで官営工場として成功させるべくブリューナを支えた。

 明治日本政府は帝国主義全盛期の欧米諸国の資本進出に警戒感を抱いていた。資本を受け容れれば次には日本の商慣習を欧米流にすべきと強制され、いつの間にか彼の国の軍艦が日本の港に停泊することになりかねない。
 伊藤博文たちは飛行機で英国へ渡ったわけではない。機帆船で港に立ち寄りながら喜望峰を回って行った。その途中で欧州諸国に植民地化されれば現地人たちがいかなる事態に陥るかを見た。22才の伊藤博文にとって印象は強烈だったに違いない。

 TPPに性急な日本政府にある種の危惧を抱くのはそうした歴史が脳裏にあるからかも知れない。徳川幕府の幕閣が無知のまま締結した不平等条約を是正し、関税自主権を回復するために明治政府は鹿鳴館や帝国ホテルまで造って交渉に腐心した。一度間違った条約を締結すると、その改正にどれほどの努力が必要かを忘れてはならない。
 日本の内政までも規制する飛んでもない条項のある条約を喜んで締結しようとしている政府と経済人たちに首を傾げざるを得ない。日本には日本独自の自然環境と文化と商習慣がある。それらをすべて米国流に作り替えて米国の投機家の利益になるのは確かだが、日本国民の利益につながるのだろうか。

 しかし安倍氏は正規社員や年功序列賃金体系までも撤廃したいようだ。すべての労働者をいつでも雇えていつでもクビに出来る派遣労働者にしようとしているようだ。それが国民の利益になるのだろうか。「恒産なくして恒心なし」とは箴言だ。恒心がなければ家庭を営み、二十年近くかかる子育てをしようと決心することはできない。少子化対策ではなく、安倍氏は日本国民を減少させて外国労働者を大量に「移民」させることを目論んでいるのではないだろうか。そう疑いたくなる安倍自公政権の諸施策だ。


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