従来の殻を破れない、実態のない言葉だけの「公約」はたくさんだ。

 自民党が選挙公約を発表した。二部構成となっていて、<第1部では「経済再生・復興加速」と「財政再建」を2本柱とした。来年10月の消費税率10%への引き上げの1年半先送りについては、「動き出した経済の好循環を止めないための決断」と理解を求めた。前回の2012年衆院選の政権公約では、第1部で教育や外交など幅広いテーマを掲げたが、今回は経済分野に絞った。
 第2部の政策集「政策BANK」には、〈1〉経済再生・財政再建〈2〉地方創生・女性活躍推進〈3〉暮らしの安全・安心、教育再生〈4〉地球儀を俯瞰ふかんした積極的平和外交〈5〉政治・行政改革〈6〉憲法改正>(<>内「グーグルニュース」より引用)

 一読して安倍政権の図々しさと現状認識の甘さに驚く。ことに第一部では経済に対する現状への危機感のない認識に、財務官僚の作文かと目を疑う。政治家なら日常活動でいかに国民・有権者が日々の暮らしで困難に直面しているか把握しているはずだ。
 あるいは各省庁から出てくる数字を自分の目で確認していたら「我が政権になって100万人もの雇用を増やした」と胸を張れないはずだ。なぜなら正社員は依然として減少し、増加したのは派遣とパートなど非正規雇用だけだからだ。そして労働給与は上がっている、という認識も財務官僚の宣伝に過ぎず、実態は労働者全体では給与の低下は止まっていない。

 第一部の<来年10月の消費税率10%への引き上げの1年半先送りについては、「動き出した経済の好循環を止めないための決断」と理解を求めた>という文言に関しては言葉もない。「動き出した経済の好循環」とは一体どのような現状を指す認識なのだろうか。
 今後国民に押し寄せるのは半年遅れで消費者物価に転嫁されるという円安による輸入物資の高騰による消費者物価高騰だ。いよいよ悪性インフレが牙をむこうとしている、という段階にも拘らず、自民党の認識は「動き出した経済の好循環」というものだとは、彼らが見ている国民経済がいかに実態と乖離しているかと絶望的になる。

 第二部の「政策バンク」に到っては古い演歌で申し訳ないが「昔の名前で出ています」状態だ。よくも恥ずかしげもなく二年間何もしなかったものだと呆れかえる。そのくせ特定秘密保護法や集団的自衛権の閣議決定などはイケイケドンドンで決めてしまった。
 10%を一年半ほど先送りしたのは「動き出した経済の好循環」を断ち切りたくなかった、とは国民の認識と隔絶した感がある。8%増税で日本経済はリセッションの局面に陥っている、との認識が自民党に無いのはなぜだろうか。現状認識が異なれば打ち出す政策もズレたモノにならざるを得ない。

 地方創生は「やる気のあるところを後押しする」とは何ということだろうか。「やる気」とはある意味危険なことだという認識もないのだろうか。
 地震・津波被災地へ「復旧事業でやる気」を見せた連中がいかなるモノだったか、少なからず学習したはずではないだろうか。実態のない「コールセンター」事業で42億円補助金を取った会社や、実態のない復興イベント業で8億円前後も食い散らしたNPO法人など、記憶に新しいのではないだろうか。

 地方の疲弊ぶりに関しても自民党の認識は甘いといわざるを得ない。「創生特区」などといった「政治ごっこ」を全国的に展開している余裕はない。「恒産なくして恒心なし」を噛み締めて、早急にUターン投資減税を実施すべきだ。雇用の場がなければいかに綺麗な施設を造っても何にもならない。
 民間活力を利用しないで、どれほど税を注ぎ込むつもりなのだろうか。補助金漬けで「喫茶店ごっこ」を駅前でチマチマとやって、地域復興だ、と幼児の学芸会のようなことをやって何になるのだろうか。若者が定住するには結婚して家庭を営み子育てをする長期的・安定的な就労の場が必要なのだ。三々五々日向ぼっこに老人たちが集まって、茶のみ話でオダを上げて日々を過ごすのとはわけが違う。テレビ番組「楽園の暮らし」の見過ぎではないかと感覚を疑わざるを得ない。

 消費税8%を元の5%に戻す公約を掲げる政党は出ないのだろうか。日本経済はリセッションに陥っている。しかも円安というカンフル剤を乱暴に注射して注射しての挙句の果てだ。日本経済に体力はそれほど残っていない。金融策は出し尽くしたし、今後の緩和の店仕舞いをどのようにするのか、その戦略が政府・日銀にあるのだろうか。
 経済成長なきインフレは単なる悪性インフレだ。経済成長すれば税率を上げる必要はない。かつて現行税制よりも低税率の時代で、日本は70兆円もの税収があった。日本は経済成長こそ目指すべきだ。そのためにあらゆる政策を集中すべきだ。

 法人減税では内部留保を増やすだけで、法人税は増税して、利益をため込むのではなく労働費として利益を還元するような誘導策を打つべきだ。個人に対しては減税し、家庭生活を基礎とした「控除」の拡大を図るべきだ。そうしなければ少子化の流れは止まらない。
 自公政権が壊してきた日本社会のあり方を元に戻し、派遣業法を元に戻すことが必要だ。世界との自由貿易は日本の国家として関税策を駆使し戦略的であるべきだ。国内産業を保護しつつ、海外の安い物資を効率的に輸入する日本の主権を確保したまま交渉に臨むべきだ。TPPなど丸腰で野獣の群に飛び込むようなものでしかない。この国のあり方を真摯に熟考したものとは言い難い自民党の公約にはがっかりせざるを得ない。


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