地方創生の困難さ。

 秋の臨時国会が29日に召集された。今度の国会の課題は「地方創生」と「女性参画社会」だそうだ。「女性参画社会」は叫ばれ出してから既に久しく、徐々にではあるが社会に浸透しつつあるようだ。ただ民間企業の勤労所得で男女格差は依然として存在し、公務員並みに所得格差は早期に是正されるべきだ。
「地方創生」は安倍政権が突如として取り上げた課題だが、どの程度具体的な政策が出来来るのか「やればできる」などと時代遅れの体育会系クラブ活動の指導者のような言葉を首相が口にするようでは心許ない。

<政府は29日、地方創生の基本理念を定めた「地方創生法案」と、地域支援をめぐる各省への申請窓口を一元化する「地域再生法改正案」の二つの法案を閣議決定し、国会に提出した。安倍晋三首相は所信表明演説で「やればできる」と看板政策のアピールに努めたが、地方創生法案は理念を定める内容で、人口減対策や地方活性化の具体策はまだ手探り。政府・与党関係者からは「スローガンだけでは迫力が出ない」との声が漏れる。
 「何をやるんだい、という具体策がまだ出てこない。それが見えてきて、(国民の期待を)5割、6割に上げるのが我々に課せられた仕事だ」。石破茂地方創生担当相は29日の記者会見でこう語り、政策の具体化を急ぐ考えを示した>(以上『毎日新聞』引用)

 地方創生の困難さが政府・官僚に解っているのだろうか。まず地方創生の最大の関門は「人材の枯渇」だ。学業優秀な若者が都会の大学を目指して上京し、そのまま都会に定住するということを戦後日本は少なくとも二回繰り返している。
 学業優秀ということは創造性のあるなしは別として、論理的な思考を通して物事を考える訓練された頭脳の持ち主だということだ。その反対を考えれば地方の住民の多くの論理性が理解できるだろう。何も地方在住者をバカにしているのではない。論理的な思考ができる人が地方には少ないという事実をいっているだけだ。

 だから東京生まれで東京育ちの国会議員の世襲候補が選挙の時だけ地方にやってきて「ふるさとの皆様、」と演説すれば当選するという悲しい現実がある。少しでも論理的に考えれば東京で生まれ育った者が地方の代表であるわけがない、と当然怒りを覚えるはずだ。ただ親がその地方出身だったというだけの話だ。
 安倍首相に彼が「ふるさとの皆様、」と演説している山口県全体が徹底した限界集落に近づいている現実が理解できるのだろうか。小食氷河期は高卒にも及び、新卒者の県内就職が半数を割り、現在では四割にも満たない。それで山口県に未来があるというのだろうか。果たして人口はピーク時の160万人から147万人に減少し、今後とも減少のスピードは上がるばかりだ。

 だから地方は未だに地方都市の「中心市街地活性化」プランに縋り、中央政府も中心市街地を活性化させなければならないと思い込んでいる。中心市街地とはいうまでもなく在来線の駅前のシャッター通りのことだ。
 在来線の駅前が栄えたのは在来線を利用する昼間人口がいたからだ。当然商店経営者も商店の二階などに住んでいた。しかしモータリゼーションの浸透で在来線の利用者は激減し、商店の二階に住んでいた商店主たちはいつの間にか郊外に一戸建てを購入して転居し、やがて商店は所有者の代が変わる時に賃貸物件に変貌していった。

 だが考えて頂きたい。駅前商店街が繁栄したのは買いに来る購買層があったからだ。その購買層の多くは現金収入を得ていた勤め人だ。つまり駅前商店街に集っていた人たちは、その地域の工場に勤務している人たちだった。地方の衰退はその工場が地方から消えたことに根本原因がある。
 何度もこのブログに書いたが「恒産なくして恒心なし」という言葉は真理だ。安定した職場がなければ安定した家庭は築けない。かつての繁栄の表層だけを再現しようと「中心市街地」の衣替えをしたところで誰が集うというのだろうか。駅ビルを建て替えたり、アーケードを取り払って「集いの広場」を造ったところで、誰が何処から集まるって来るのか。

 地方の創生はUターン投資減税をして、企業が地方へ回帰しなければ困難だ。海外へ移転した数万社が国内へ回帰すれば雇用の場が確保でき、若者が地方に定住できる。政府は「コンパクトシティー」などといって駅前中心市街地に地方の住民を集めようと画策している。それが地方の活性化につながるというのだろうか。
 地方の多様な生き方を可能にするためにも、経済基盤たる企業の地方展開がなければ何も始まらない。地方住民が喫茶店ごっこをやっても地方が繁栄しないのは誰が考えても明らかだ。

 地方の「殖産興業」を再び始めなければならない。安倍氏が選挙地盤としている下関市の経済的な落ち込みは激しく、山口県でも最も人口の減少している地域だ。まずは安倍氏が下関市長となって下関市の様々な課題が「人口減」に根差していることを理解すべきだ。
「やればできろ」がどれほど困難なことか、安倍氏は本当の「ふるさと政治家」として地域社会を理解するためにも、下関市長から出直すことをお勧めする。


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