急ブレーキのかかった中国経済。

 これまで中国経済を牽引してきたのは外国投資だ。中国国内に潤沢な資金がなく、中国国内に中国経済をテイクオフさせるべき個人消費市場があったわけでもない。外国資本の投資により製造業が中国内に展開し、安くて豊富な労働力を使って組み立て製造を行い、出来た製品を輸出して企業利益を確保する、という経済モデルでここまでやって来た。中国が世界の組立工場といわれるゆえんだ。
 しかし肝心要の外国投資が大きく落ち込んでいる。中国経済に最も寄与してきた世界経済大国日本の企業からの投資の落ち込みが最も激しく、今年になって46%台の減少になっている。米国と欧州企業からの投資もそれぞれ17%台の落ち込みになっている。

 その主な原因は労働力の高騰にある。平均労働賃金が月額4万円から5万円となり、さらに賃金引き上げを巡って労働争議が起こっている。次いで不透明な商業ルールにある。法治国家とは言い難い、官僚との特別な繋がりがなければ申請や許可がスムーズに運ばないことは日常茶飯事だし、中国社会も「契約社会」とはいえないほど個々人の繋がり重視の社会だ。
 日本や欧米諸国が慣れ親しんだ世界標準の商慣行が通用しない社会に対して、さらなる投資を呼び込むのは困難だ。そして中国は外国企業からの投資が大きく落ち込み、中国経済の主力エンジンが不調をきたしている。

 日本経済は6割方が消費で、投資は3割にも満たない。しかし中国ではその構造は真反対だ。6割以上を占める投資のうち、その半分を占める国内不動産投資もおかしくなっている。
 中国主要都市60ヶ所のうち、その90%の地点で不動産価格が下落している。すでに不動産投資で転がしてきた理財商品が15%程度の利子を支払う余力どころか、元金すら支払えない状況になっている。

 中国の「元」は国際通貨ではない。だから主として外国からの投資ドルを基にして米国債を大量に購入して、その米国債を裏打ちとして「元」決済を中国が進出したアフリカなどで「決済通貨」としてきた。中国政府が主導している「世界投資開発銀行」構想も動機は「元」を国際通貨にしようとするものだが、依然として「元」は米国債の裏打ちなくして世界に単独で通用する信用をまだ得ていない。
 そこが日本の「円」と決定的に異なるところだ。いわば中国は中国内の通貨「元」を発行できるものの、国際通貨の発行は出来ない状態のままということだ。だから外国からの投資が減少すれば中国が外国へ投資する資金も減少することになる。日本が「円」で外国投資できるのに対して、中国は「元」で外国に投資できない。その基となるドル投資の減少は決定的な影響を中国経済に与える。

 中国は中国を経済大国だと自称しているが、それは飛んでもない勘違いだ。中国はいまだ「元」の国際通貨として信任すら得ていない。いわばローカルカレンシーの発行国の一つに過ぎない。
 中国経済は張子の虎だと以前国このブログで指摘した。今も張子の虎のまま、大きな顔をしているに過ぎない。なぜもっと国際協調に気配りをし、近隣国ことに日本との友好に意を注がないのだろうか。金連諸国に軍事的圧力をかけて警戒されるのは、中国の国家戦略として最悪の選択肢だ。なぜなら中国は外国企業からの投資なくして国家として成り立たないからだ。

 しかし未成熟な中国内の金融に目を瞑り、構造や内容に着目するよりも貿易額の規模にのみ目を奪われて「経済大国だ」と国内と世界に公言して不遜な態度をとり威張ってしまった。中国の指導者たちの人格的な欠陥により中国は大きく道を踏み誤った。
 共産党支配の国にして社会保障が未整備という国民軽視の政策には驚くばかりだ。かつて社会保障は国営企業や集団農場・人民公社に役目を負わせていた。しかし経済構造が大きく転換する中で、国営企業に社会保障を負担する余力はなくなり、農村部の人民公社はとっくの昔に解体している。政府は潤沢な税収を社会保障の構築に回すべきだったが、政府要人たちの懐や軍備を潤し、世界進出に向けて外国への投資に向けてしまった。国民を置き去りにしたツケを、中国政府はいつかは支払わなければならない。そのツケが支払えなければ中国民は中国共産党政府を見限ることになる。


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