除染基準を「現実」的に見直す狂気。

 各報道機関によると<環境省は、除染の後の空間放射線量を毎時0.23マイクロシーベルト以下とする目標値を定めている。ただ、一部の自治体からは、「達成は難しい」と、より現実的に見直すよう要望も出ていた。このため環境省は目標値をこれまでのほぼ倍の毎時0.4~0.6マイクロシーベルト前後に引き上げる方向で自治体と協議を進めていることが分かった。
  環境省などは、毎時0.23マイクロシーベルトを上回っても年間の追加被ばく線量である1ミリシーベルト以下に抑えられる
として、今月15日にも自治体を集め 目標の引き上げについて話し合うことにしている>というのだ。

 つまり現実的に除染基準とされている毎時0.23マイクロシーベルトを上回っても年間の追加被曝線量が1ミリシーベルト以下に抑えられるとして、環境省が各自治体と協議に入っているというのだ。しかし基準を緩めて除染が現実的に実施可能になるからといって、放射線被ばく線量が現実的に減少するわけではない。
 そしてロシアがチェリノブイルで定めた基準と比較して、日本の方が格段に緩いという「現実」を国民は知らなければならない。日本では年間放射線量20ミリシーベルト以上50ミリシーベルト未満を避難指示解除準備区域としているが、チェリノブイルでは強制避難ゾーンになっている。日本では5ミリシーベルト以上20ミリシーベルト未満を住居可能としているが、チェリノブイルでは移住の義務ゾーンとなっている。さらにチェリノブイルでは1ミリシーベルトから5ミリシーベルトは移住権利ゾーンであり、0.5から1ミリシーベルトは放射能管理ゾーンとなっている。

 日本の環境省が各自治体と協議して定める年間放射能被曝基準とは一体どのような目的から設定されたものなのか、もう一度基本に立ち返って考えなければならない。それはそこで暮らす住民の健康と命を守るために設定されたものであって、除染しても現実的に被爆放射線量がそれほど低下しないため「現実」に合わせよう、というのが基準見直しなら本末転倒ではないだろうか。
 除染効果が薄いのなら、除染に莫大な予算を投じるよりも、その予算を当該地域住民の移住費用に回して安全な地域へ住民を移住させる方が優先されるべきではないだろうか。チェリノブイルでは低被曝線量地域でも移住権利区域などを定めて、住民がそこで暮らすか移住するかを決めさせ、移住するならその費用を負担するという。

 そして低線量地域でもチェリノブイルでは放射能管理ゾーンを設定している。日本も当然そうすべきで、放射線量が低い地域でも牧草地や雨水の溜まる溝やそこの沈殿汚泥などに放射能物質が濃縮されていることは十分に考えられ、ホットスポットが人口密集地の首都圏に各所にあることは十分に推測される。
 そうしたホットスポットとみられる地点の放射能管理を行政は定期的に実施しているだろうか。そして広報紙などを通してホットスポットの放射線量測定値などの情報を住民に開示しているだろうか。子供たちの遊び場の近くにホットスポットがあるなら、行政は注意を喚起するとともに、そこの除染を早急に実施すべきだ。

 福島県や各自治体は住民を行政り飯のタネと勘違いしていないだろうか。なぜ福島県は福一原発爆発時に直ちに『全県民避難を国に要請する』などという宣言をしなかったのだろうか。それとも県民がいなくなれば県が消滅すると危機感を覚えて県民の健康よりも自分たちの行政権益の方を優先させたのだろうか。
 除染は当初から困難だとされていた。予算対効果を考えるなら、移住の方が遥かに住民の健康に有効だと指摘されて来た。しかしそれを阻む勢力があって、除染を闇雲に実施し、結果として放射線量が思ったほど逓減しないという現実に打ちのめされているのだろう。それなら基準値を『現実』に合わせて緩めれば良い、という選択を環境省や各自治体はしようとしているが、それがいかに本末転倒な議論で狂気じみたことか、国民は心底からの怒りを以て抗議すべきだ。


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