経済界が中国に抱いた憧憬が幻想として消え去る時。

 中国13億人(本当は15億人か)の人口を巨大なマーケットと見なし、そこに製品や商品を売り込めれば巨大なビジネスチャンスになり得る、と経済界は『中国市場』に過大な憧憬を抱いてきた。その原動力に突き動かされるかのように中国に企業は競って投資し生産拠点を移してきた。
 しかし、それらは幻想に過ぎなかった。かつて中国の安い労働力はチャイナ・リスクを差し引いても稼げる魅力であったが、今となっては労働力の反乱に手酷いしっぺ返しを受けている。日系企業が中国から撤退を決めると莫大な退職手当や労賃の一定期間の保障を求めての労働争議が頻発し、撤退しようにも出来ないでいるようだ。

 中国のGDPの二大牽引力は貿易と国内投資だった。貿易はいうまでもなく資本主義圏を相手にした自由貿易で中国社会は潤沢な利益を手にしてきた。国内投資は外国投資家や外国企業、それに国内不動産開発などの投資がGDPを押し上げて来た。
 しかし中国は巨大になった図体の取り扱いに窮しているようだ。既に食糧は自給国家から輸入国家に転落して久しい。エネルギーも自給国家から輸入国家に転落したのみならず、石油輸入量で世界第一位だった米国を抜いて世界第一位になった。中国は『自由貿易』なしでは一日たりとも過ごせない状況になっている。

 中国政府がそうした状況を正しく認識すれば『自由貿易』の支障になる事態を招来することは避けるはずだ。しかし中国政府は何を勘違いしているのか、近隣諸国、とりわけ中国のシーレーンの死命を制する東・南シナ海に自ら求めて荒波を立てている。しかも『核心的利益』と自称して勝手に既得権を主張し、権益を軍事力を背景にして確保しようとしている。
 そうした行動は『自由貿易』の理念に反するし、中国を独りよがりの我儘国家として世界に強く印象付けるだろう。決して中国の未来に良い影響を及ぼさないのだが、中国政府は未来のことなどに忖度する余裕もないようだ。既に中国政府は国内統治・統制をとれなくなっているかのようだ。

 中国政府は国内政策を根本的に誤ったようだ。共産党の一党独裁をいつまでも続けることに問題があった。幕藩体制を軍事的に打破した明治日本も、軍事政権にならなかったし、藩閥政府をいつまでも続けることはなかった。期限を区切って普通選挙ではなかったものの、国民の自由投票による国会開設を確約し立憲君主国家へと脱皮していった。
 しかし中国は1949年10月に共産党政権を樹立するや、国連に加入していた『国民党政権』に代わって国連に加入し、あまつさえ常任理事国の椅子に座ってしまった。それ以来70年近く、共産党一党独裁政治を維持してきた。
 だが、権力は腐敗するものだ。それが絶対的な権力であればある程、絶対的に腐敗する。中国政府は腐敗した権力者たちの巣窟と化してしまった。そして腐敗体制を維持し、更に利権を手にしたいと願望する貪欲な権力者たちが、国民に所得配分されるべき利益を根こそぎ自分たちの懐に入れ続けている。

 13億人の市場が形成されるには厚い中間所得層が形成されなければならない。しかし、中国はそうはならなかったし、むしろ巨大な貧困層と一握りの富裕層とに格差が広がってしまった。13億人の購買層が形成されることはなかった。今後も政治体制が民主化されない限り、腐敗した共産党独裁体制のまま中国は巨大な貧困層が大きな社会不安定要因としてますます不安定化するだろう。
 中国の200万人を超える人民解放軍とは名ばかりの軍隊で、実態は火器を持った総合商社だ。彼らは商売と利権確保に勤しんでいる。彼らの軍事力は彼らを守るためにある。決して国民を外敵から守るための軍隊ではない。7軍区に分かれた人民解放軍はかつての軍閥そのままの存在でしかない。

 中国内の暴動件数は報道されていないため推定でしかないが、数年前までの年間8ないし10万件から、現在では数十万件に達しているといわれている。多く見積もる推計では年間60万件は起こっているだろうといわれている。それがマトモな社会と言えるだろうか。
 しかもかつては治安検察がパトカーなどで駆けつけると蜘蛛の子を散らすように逃げていた人たちが、今では反対に集まって来て、パトカーをひっくり返して火を放ち、治安警察はほうほうの体で逃げているという。人民解放軍の監視所が住民たちに取り囲まれて破壊されたとの噂も聞くようになっている。

 この期に及んでも中国政府は東・南シナ海で隣国諸国と軋轢を演じているが、彼らの『核心的利益』はむしろ国内統治にあるのではないだろうか。国内の治安が悪化して『核心的利益』も何もないだろう。
 中国に進出した日本企業経営者たちは「安い労働力」でひと儲けしようとした単細胞たちばかりだから、撤退するに際して損失を出したら経営者責任を問われかねないとして一日送りに先延ばししているのだろうが、それこそ無能な経営者たちと批判しなければならない。13億人市場と囃し立てた親中評論家たちや政治家たちの口車に乗せられた愚かさを認めて、損切りのつもりで早々に撤退すべきだ。もはや一日の猶予もならない。


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