TPP交渉の茶番劇

 今月下旬のオバマ米大統領訪日までにTPP交渉を仕上げるための猿芝居が演じられている。いかにも農業五品目の関税撤廃を要求する米国と聖域として死守する日本が鬩ぎ合っているようだが、実際のところは適当な落とし所を探っている。
 日本は自動車に関して即時関税撤廃を米国に譲歩している。米国内自動車産業の強い圧力により向こう二十五年間、現状の税率を下げるものの完全撤廃をしないことで妥協した。だから農業五品目にしても完全撤廃ではなく引き下げで妥協を図ろうとしている。

 落とし所としては例えば牛肉では現行の30数%を10%に近い一桁台とすることで決着を図るようだ。そして日本は国内に「関税ゼロではなく関税存続を勝ち得て、聖域を死守した」と宣伝し、米国は30数%から日・豪決着の20%台ではなく「一桁と限りなく関税撤廃に近い」として国内を慰撫するつもりのようだ。
 そしてTPPの枠組みの構築に成功すれば、日本の消費税と同じように、一旦3%で導入すれば後に税率を上げる障害は新規に導入するよりも遥かに低い、というのと同じだ。米国は日本と妥協を図ってでもTPPを締結することにより、将来の完全撤廃は成ったも同然という考えだろう。

 一旦結んだ包括的国際条約を破棄するのは困難だ。二国間条約と違って、参加国全体との問題が出てくるからだ。TPP条約は後戻りできない一方通行だといわれる所以だ。
 しかし将来の日本は政権を自・公から取り戻して、TPP破棄へ向かって努力しなければならなくなるだろう。TPPで怖いのは関税撤廃だけではなく、非関税障壁とISD条項だからだ。

 安倍政権が珍チクリンな「戦略特区」構想を打ち出しているのは、非関税障壁に基づくISD条項発行に対する備えだといわれている。つまり米国流の「正社員」=「限定正社員」を日本に根付かせる一里塚にするつもりだろう。様々な規制撤廃も米国流の自由社会を「戦略特区」内で実現して「日本は世界基準へ変革しようと努力している」との実証例に使おうというのだ。
 そうして日本の労使慣行も伝統的な企業風土もすべて破壊し、投資と効果を厳しく企業に問う株主優先の企業経営を日本にも持ち込もうというのだろう。そうした動きに早くも反応して「グローバル企業」を標榜するファストりティいリングなどが「限定正社員」の大幅導入を発表した。

 パートや派遣が「限定正社員」になることは昇格かもしれないが、今後採用するはずだった正社員までも「限定正社員」として採用するとなれば格下げだ。それどころか企業内で社員が企業の全体を把握し勉強する機会でもあった「転勤」がなくなり、社員は生涯社員でしかなくなる。
 投資家は投資家であり続け、企業経営者は企業経営者であり続ける。そうした米国流の社会が日本に浸透し定着することが日本国民の最大幸福に繋がるのだろうか。いやその前に、使い捨てられる社員の企業が地域や日本に貢献するのだろうか。グローバリズムの波に乗り、海外へ出た日本企業は日本企業たりえるのだろうか。その企業は日本国民から雇用の場を奪い、日本国内の投資資金を海外へ持ち出すだけではないだろうか。

 安易なグローバリズムの囃しや太鼓を叩く日本のマスメディアは日本国民のためのマスメディアなのだろうか。本当に日本国家の繁栄を願うジャーナリズム精神を持っているのだろうか。
 いや、そうした観点こそが日本一国繁栄を希求する「姑息」な態度なのだというのなら、私は姑息な愛国者になろう。日本と日本国民の繁栄に繋がらないあらゆる選択に反対し続けよう。だからTPPには賛成できない、グローバリズムを信奉する人たちは投資家など1%の人たちに奉仕する売国奴だと批判し続けよう。


このブログの人気の投稿

それでも「レジ袋追放」は必要か。

麻生財務相のバカさ加減。

無能・無策の安倍氏よ、退陣すべきではないか。

経団連の親中派は日本を滅ぼす売国奴だ。

福一原発をスーツで訪れた安倍氏の非常識。

全国知事会を欠席した知事は

安倍氏は新型コロナウィルスの何を「隠蔽」しているのか。

自殺した担当者の遺言(破棄したはずの改竄前の公文書)が出て来たゾ。

安倍ヨイショの亡国評論家たち。