ここに到ってIMFは日本経済の復活のためには消費と投資が必要だとは、

 IMFが2014年の世界経済成長率を3.6%から3.7%へと引き上げた。後進国の成長率は逓減状態だが、先進諸国が潜在的な成長力が欧州や米国で表に現れてきているようだとしている。
 日本に関しては1.7%程度だとしているが、現状の財政出動や輸出に頼るのではなく、内需型の消費や投資を活発化しなければならないと指摘している。しかし日本に消費税率引き上げが必要だと指摘していた張本人はIMFではなかっただろうか。そのせいか消費増税による消費の冷え込みは一時的なもので、大したことはないと断定しているが。

 米国の第二の財布といわれるIMFに日本のことをとやかく言われたくない。IMFのメッセージは米国のためにあるようなものだ。だから平気で日本の財政のために消費増税は必要だと余計な嘴を日本の財政政策に挟むのだ。
 しかし消費増税が決まるや、日本の経済成長のためには消費と投資の活性化が何よりも必要だという本来の正論をご神託のようにのたまう。なんともご都合主義なご神託もあったものだ。

 けだし日本経済成長のためには消費と投資の刺激が必要なのは言うまでもない。しかし日本政府はすべての消費に3%の増税を課して、経済の主力エンジンの個人消費を冷やすことにしている。それで景気が落ち込んではならないと、景気対策として法人税減税を行うという。これほど見当ハズレな政策が大手を振って決定されることも珍しい。
 法人減税とは法人の利益から経費を差し引いた課税利益が上がった企業が支払う税金が減額されることだ。つまり労働分配率を引き下げて利益を上げても法人税をそれほど支払う必要がないということで、法人減税は労働分配率を引き下げる方向へ働く政策だということを安倍氏は知らないようだ。それでいて「賃金を上げてください」と安倍氏は機会をとらえて発言している。なんという愚かな姿だろうか。

 労働分配率を引き上げたいのなら、引き上げた率に従って法人税率を引き下げるとすれば良かった。労働分配率と連動した法人税制を考案する知恵が政府になかったのだろうか。
 そしてそれが消費増税による景気の落ち込みに対する政策とは笑うしかない。法人減税をして内部留保された利益は法人経営陣の報酬査定の資料になりこそすれ、個人消費の落ち込みを補って余りある経済的な効果をもたらすことは皆無だということが解らないのだろうか。

 しかも法人利益を計上していない企業にとって法人減税は無関係だ。つまりこの国の7割の企業にとって法人減税は関係ないのだ。
 このブログでは常々消費増税に反対してきた。むしろ日本の高い消費税を減税すべきだ。英国は生活必需品に対する消費税は非課税だ。かの重税国家スウェーデンですら生活必需品に対する消費税は7%だ。日本の消費税が5%から8%に引き上げられることがいかに世界的に見ても酷税かがお解りだろうか。

 投資減税はUターン投資減税を実施すべきと何度もこのブログで一昨年から書いてきた。特に中国から撤退して日本に回帰する企業の投資は優先的に減税すべきだ。
 中国は姑息にも進出した日本企業が撤退するのを邪魔している。中国に進出した日本の工場や企業が利益を上げた場合、日本への送金を極段に制限し、撤退する場合には中国人労働者への高額な退職金を支払うように求めている。さらに工場内の生産施設を放棄して、経営陣の実が帰国するように求められる、というのだ。これほど酷い取引に日本のマスメディアは「中国へ進出しない経営者は時代遅れだ」とグローバリゼーションのラッパを吹き続けた。

 碌に法人登記も商法も何もない状態の人治社会へ日本企業が進出すれば丸裸にされるだけだ。しかし、それでも進出した企業はリスクを取って撤退すべきだ。そのために日本政府はUターン投資減税を行い、企業の国内投資に緩和した金融を張り付ければ経済の中で貨幣が循環することになる。日本の金融緩和は何も株式やFXなどの鉄火場の寺銭に印刷したものではないはずだ。
 マトモな雇用の場を青年たちに用意するためにもUターン投資減税は早い段階から実施すべきだった。しかし安倍政権は限定的に「経済特区」への投資に対して限定的な投資減税をするだけだが、それもやっと日の目を見ようとしている状態だ。海外諸国歴訪は風のように迅速だが、急ぐべき中国進出企業への救済策は余りに鈍足だ。実質的には何もやっていないに等しい。

 円安が効果を持つのは国内に生産拠点がある場合だけだ。海外で生産して日本国内へ輸入する経営モデルを採用している企業は円安による企業打撃をモロに受けている。
 円安は国内で生産を続けていた企業に対するご褒美にはなったが、海外へ移転した企業にとっては安易な低廉な労働力を求めて国内労働力を切った報いだ。経営とは長期的な視点で行うべきで、そこに日本国内社会や日本国民の視点が欠落していては米国の禿鷹投機家たちと少しも変わらない。日本の経営者たちは腐肉を漁る禿鷹に成り果てたのだろうか。奇しくもIMFが日本経済は消費と投資を重視すべきと正論を吐いた。しかし安倍政権はその逆噴射を決めてまさに実行しようとしている。


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