安倍氏の目論む「好循環実現」国会とはアベノミクスと同様に根拠なき気勢を上げているだけだ。

 通常国会開会に先立ち、好景気を全国津々浦々まで行き渡らせて国民が好景気を享受する「好循環実現」国会にする、と安倍氏は施政演説を行った。円安株高により景気が回復して国民生活が改善されると安倍氏が国民と約束したのは既に一年以上も前の話だ。
 確かに一部業種で収益改善がみられるのは確かだが、甘利大臣が「円安により企業業績が好転したのは一分限定的だ」と慨嘆したように日本経済は内需型になり、国内企業の多くは海外へ生産拠点を移しているため、円安により輸出貿易の為替利益の恩恵は極めて限定的のようだ。むしろ労賃の安い海外で生産した品を国内へ輸入する企業形態になっていた分野では円安により貿易差損すら生じている。

 安倍政権になって民主党政権時に創設していた「成長戦略室」を解体したが、安倍氏の経済政策は未だにコレという妙手が何も手が打たれていない。なぜ金融緩和により円安を誘導しようとする際に、同時にUターン投資減税を実施しなかったのだろうか。
 海外に生産拠点が移転していれば円安により輸出が振興されるというのは絵に描いた餅でしかない。デフレ経済下の国内で成功した企業モデルは安い労賃の中国などで生産した商品を円高により安く国内に輸入して安値販売で急成長した企業ばかりだ。経営者は碌に何も考える必要もなく、国内生産を単に中国などへ移転させただけで成功者になれた。そうした促成栽培の安物経営者たちの企業モデル転換は急激な円安に見舞われて右往左往しているうちに企業業績が悪化している。ユニクロなどがその典型的な事例ではないだろうか。

 安倍氏は津々浦々に景気の波を及ぼすと発言したが、これほど他力本願な能天気政治家も珍しい。消費増税で5.5兆円も個人消費を冷え込ませて、それと同額を景気対策として手当てしたから大丈夫だ、と御用評論家は安倍氏をヨイショしているがそうは問屋がおろさないだろう。(2014年の景気見通しについて、野村証券の田村浩道チーフストラテジストは「消費増税が実行される4月以降は、マーケットの雰囲気は悪くなるというふうに思っております。ただ、経済対策、5.5兆円以上打たれますので、マクロ的には、大きな問題はないと。ことしの年末の日経平均は、1万8,000円ぐらいに大きく上昇するというふうに考えています」と語った。)
 安倍氏の云う景気対策の一つは古典的な公共事業の大盤振る舞いで、財政出動は効果が限定的で景気対策に役立たないというのが常識だ。その結果として建設国債の山が積みあがっているのだが、安倍氏にそうした反省もないまま「アンシャウトレジューム(旧制度)からの脱却だ」とドンキホーテさながらの戯言をほざいている。

 安倍氏の景気対策のもう一つの柱が法人減税で、その中身は法人税率の引き下げと「経済特区」への投資減税だという。法人減税は法人税を支払っている法人にしか関係しないのは当たり前で、国内企業の75%は関係ない。しかも法人税は企業利益の「課税所得」に課されるもので、それにより労働分配率が増えるという保証は何もない。
 さらに「経済特区」への投資減税はさらに限定的で、そこには限定正社員の思惑もあって、地域経済に及ぼす影響も限定的だといわざるを得ない。安倍氏の主張する「景気対策」と称するものはアベノミクスと同様に具体的な因果関係のない言葉の勢いだけの掛け声に過ぎない。何となく国民に期待させるのは上手だが、本当にどれほど効果があるのかは疑わしい、というよりも具体的な効果なぞ何もない言葉の上っ面の勢い頼みの演説だ。

 そこに「景気は気から」と香具師のような啖呵を切る証券会社の運営するシンクタンクの御用評論家がヨイショしているだけだ。今年の4月を契機に、景気は確実に腰折れとなり、国民は景気後退下のインフレに悩むことになる。安倍政権は日銀総裁に就けた人物を脅して「異次元金融緩和」を実施し大盤振る舞いの公共事業をばら撒いただけで、雇用の拡大に資すべき新規投資減税は今のところ何も実施されていない。経済特区構想も今から各地の自民党国会議員が睨みあって既得権益の綱引きが始まるのだろう。そうした構図は55年体制下で延々と繰り返されていた最も自民党的な国民不在の談合と妥協の馴れ合い政治そのものだ。まったく反吐が出る。


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