働く者たちの声はどこへ消えたのか。

 政治に影響力を与える「働く者」たちの声が日本の社会から消えて久しい。労働組合の組織率が26%を下回り、更に低下傾向にあるのも影響しているだろうが、労働組合の組織率にカウントされる「働く者」たちは非正規の一部と正規社員だけだから、実際は「働く者」たちの組織率はもっと低いとみなければならない。
 しかも問題なのは上部組織・連合の役員になるには単位労働組合の幹部として長年の実績を積まなければならないことだ。つまり単位労働組合で組合専従役員となって長年委員長を勤めあげるのが条件となる。そうした長年の専従暮らしを評して「労働貴族」と揶揄されることがあるのはそうした所以だ。

 さらに労働組合内民主主義が徹底されているか否かが問題となる。労働現場を離れて組合専従となることが一種の特権階級化し、毎年同じ人が幹部に選出され続けている組合が全国労働組合の殆どではないだろうか。
 そこに一種の企業経営者側との癒着が起こり「労使協調」の名の下にここ十数年も労働分配率が低下し続けたことが挙げられるのではないだろうか。闘う労働組合運動との認識が日本社会から薄れて久しい。5月1日のメーデーも年中行事の一つと化して久しいのではないだろうか。

 企業は誰のものか、と逮捕された日本のファンド運営者がほざいたことがあった。彼は「企業は株主のものだ」と主張した。実際にその事件のあった頃を境にして経営者たちは株主総会を以上に恐れ、株式配当の増額と経営実績に基づく高額な経営者報酬を求めるようになった。
 働く者たちの声が社会から消えたのに労働環境も大きく変わったことを挙げなければならないだろう。正規社員が全職種で6割を切り、それのみならず正規社員の非正規化を策す政府の動きから正規社員たちも目立つ活動をしなくなったのだろう。「働く者」たちの政党だった民主党が「消費増税」という「働く者」たちに対する裏切り行為に走った際に、連合はどのような反応を見せただろうか。そして今回、来年四月から消費増税を安倍氏が決定した際にどれほどの抗議行動を起こしただろうか。

 いわば連合も形を変えた官僚に過ぎない。財務官僚が赤字国債残高を楯にして「一律課税」の消費税増税を政治家たちに求めた際に、連合が政権に押し上げた菅民主党が易々と財務官僚の掌に乗ったことに全組織を賭した反対運動を起こすべきだった。菅民主党政権に反旗を翻すべきだった。それをしなかった連合を頂点とする労働組合は民主党と同じく国民の信を失った。
 非正規も含めた、全「働く者」たちの運動を起こさなければならない。経営者たちは政府に働きかけて「限定正社員」などの解雇自由な正社員を作ろうとしている。

 企業は誰のものか、と問い掛けた日本のファンドマネージャーは「株主のもの」だと世間に訴えた。しかし彼は間違っている。企業の成立要件として中学校の社会で「三要素」を上げている。それは「資本」と「土地」と「労働力」だ。資本とはまさしく株主を含めた資本家だが、土地とは企業が立地する地域社会のことだ。労働力とは「働く者」たちのことは論を俟たないが、問題なのは「土地」が経営者たちの脳裏から消え去っているのではないだろうか。
 企業立地として地域社会に対する責任を忘れては成立しない。そして「土地」とは地域社会を支えるのはその地域に暮らす多くの人たちのことだ。企業経営者が企業の社会性を失念して自らの保身と労働分配率を削減させて内部留保に走っている昨今の風潮は「土地」に対する大きな裏切りだ。そのことにも目を向けない労働組合はまさしく視野狭窄症に陥っているといわなければならない。「国民の生活が第一」の政治を政治家に求めるのが連合の本旨であり、立脚点ではないだろうか。


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