TPPが成長戦略に必要とは、いかなる思考回路をしているのだろうか。

  TPPが成長戦略に必要な制度だと発言する政治家や評論家がいるようだ。なぜそうした結論になるのか、理由がまったく解らない。


 TPPとは関税の完全な撤廃を目指す貿易条約だ。単純に考えればAll or Nothingの世界に集約されると見るべきだろう。


 


 非関税障壁も含めてあらゆる関税が撤廃される、ということはその協定に加わった国々が貿易に関して一つの国になるのと同じことだ。それも社会制度や商習慣までも含めて、一つの制度一つの商習慣に統一されるということだ。


 そうするとどういう事態が起こるのか。独禁法が存在しなければ、企業間で激烈な潰しあいが始まり、寡占から独占へと企業形態が各分野で集約されるのは火を見るよりも明らかだ。


 


 農業分野で考えれば、生産規模の「土地」という限界要素から全く工業と同じことが起こるとは考えられにくいが、それでも農産品に一つの価格が条約諸国に共有されるだろう。日本国内でコメの価格が地域によって大きく異なることがないのと同じように。


 漁業においても企業の論理が適用されかねない。日本の地域漁協が資源確保から使用する網目や漁獲制限を設けているのも「非関税障壁」と問題にされれば、日本の漁場も条約参加各国に開放せざるを得なくなるだろう。そうすると資本規模の論理が漁業の世界を制圧しかねない。


 


 TPPを簡単に捉えてはならない。非関税障壁はどの範囲までとするのか、関税は完全に撤廃するのか、それとも各国の国内産業保護や国内産業政策に応じていくらかは残せる余地「関税権」の存続を認めるのか、を徹底して議論しなければならない。


 産業界を代表する財界の能天気な人たちは「商売チャンス」が増える、と捉えてTPP参加を歓迎しているようだが、条約参加国内の最大の経済大国米国基準がTPP三か所国内を席巻することを予測しているのだろうか。日本国内で通用する「生産調整」や「労働形態」が一掃されて、すべてが米国流に変革されることを想定しているのだろうか。


 


 そして独禁法はTPPでいかように扱われるのだろうか。巨大企業が弱小企業を次々と企業買収や株式を通して支配する事態を考えているのだろうか。


 つい先日、西武鉄道が株式支配会社の意向により廃止されかけた事態を忘れたとでもいうのだろうか。地域住民の利便性や地域文化よりも企業収益こそが最大の目的となり、根こそぎ変革するのが米国流だ。


 


 なぜ鉄道大国だった米国から大陸横断鉄道がなくなったのか。理由は簡単だ。鉄道会社の株式を自動車会社が取得して、自動車販売に邪魔な鉄道を廃止したからだ。


 その方が自動車製造会社が儲かるとの企業戦略により、レールを剥がして道路に変えてしまうのを厭わないのが米国資本主義の「合理性」だ。その「合理性」と裸でぶつかろうというのがTPPだ。余り簡単に「TPPは成長政略に欠かせない」などと能天気な、根拠のない屁理屈を弄しないことだ。



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