中期財政計画を確立するためにはまず歳出削減努力をすべきだ。
財政計画の収支バランスを見通すには水膨れのようにブクブクと膨れ上がった100兆円近い歳出総額の削減こそが必要だ。同時に細切れになっている国の会計をすべて統合して、複式簿記に改めて一枚のペーパーで会計情報のすべてが国民に説明できるようにすべきだ。
現行制度は一般会計の話をしているに過ぎず、国庫全体の話ではない。それでプライマリーバランスがどうだこうだというのはおかしくはないだろうか。国民に増税の理解を求めるのなら、官僚たちも隠し財産や別財布をすべて国民の前にさらけ出すことだ。
一般会計から繰り出ししている社会保障費などを別財布として管理していることが既におかしいとなぜ政治家をはじめ評論家諸氏は考えないのだろうか。その総額たるや一般会計に迫るほどの規模だし、その規模の内実際の給付にどれほど回っているのか、基礎年金がいかほどあるのか詳しくは誰も知らないというのは夏の夜のミステリーというよりも、官僚たちの怠慢そのものではないだろうか。
国債管理会計は一般会計の比ではない。そうしたこの国の財政の全体像を知らせずにおいて、なにが財政再建だ、と怒りすら覚える。為替管理会計でどれほどの赤字を積み上げているのか、財政投融資で石油開発公団や宇宙開発公団などにこれまでどれほど出してきて、今後どうなるのか、誰も知らないのは政治家たちが無知だからなのか、それとも官僚たちが「知らしむべからず、寄らしむべし」でマスメディアも政治家も評論家たちも寄らしめてしまったためなのだろうか。
いずれにせよ、この国の公組織とそこで働く人たちは余りに国民を舐め切っている。先進諸国でこれほど財政情報を国民に秘匿している国はない。まず情報の透明化を図るのが財政債権に国民の貢献をお願いする前提条件だ。
相撲の行司よろしく、首相が「有識者」から景気動向の見解を窺って、それから「消費増税」を決定するという。何と愚かな政治だろうか。20年も患っていたデフレ病から恢復している、という判断が出れば、すぐに荷を負わせて働かそうとしているのがマトモな医師の判断としてあり得るだろうか。しかも恢復しているのか、単なるインフレで病そのものは少しも恢復していないのではないか、というのは誰が判断できるというのだろうか。
御用マスメディアは高級店を取材したりして「高額商品が売れている」とか、国民に景気が良くなっていると、幻想情報を刷り込もうと躍起になっている。国民所得がインフレ率よりも伸びて初めて可処分所得が増えるという初歩的な経済原則に立ったを報道を行うべきだ。景気判断をするよりも前に、複式簿記を実施してこの国のすべての会計情報を一枚のペーパーに表現することの方が先決だ。