「長期金利上昇は実体経済に影響ない」(日銀総裁談)とは日銀の役割を自ら否定するものだ。

  日銀の黒田総裁は「長期金利上昇は実体経済に影響を及ぼさない」と昨日の記者会見で主張したようだ。しかし金利の番人たる日銀が10年もの国債金利が今月15に0.92まで上昇した事実が実体経済に影響ないとは談話で述べるとは奇妙なことだ。


 日銀の最大の役割が公定歩合決定だ。その日銀の権能を奪いかねない市場金利の上昇は間違いなく黒田総裁の「異次元緩和」策を脅かし、もしかすると金利が日銀の手を離れて暴騰する可能性すらあるのが「秘かに迫る国債暴落」の予兆かもしれないのだ。


 


 IMFは世界的な金融緩和を当面は容認するようだが、IMFが対応できる金融問題は稼働できる資金量から極めて限定的だ。そのIMFがたとえ米国の金融緩和を「間違っている」と批判したところで何が出来るというのだろうか。


 日本の金融緩和策に関してもIMFは当面容認するとしたようだが、しかしどの水準が容認できない段階なのかは示さなかった。日銀にしても2%インフレターゲットを示したものの、そのターゲットを達成した段階でどのようにしてインフレから脱却するのか処方箋を示していない。つまり金融拡大というインフレへのアクセルは踏んだものの、それが実体経済にどのような影響を及ぼし、いかにして安定的な巡航速度にするのかが明確でない。


 


 以前から何度も書いてきたように、金融緩和は経済の通過量の増大に過ぎず、実体経済が劇的に変化するわけではない。いわば投機経済を刺激するだけに過ぎない限定的なものでしかないという自覚を常に持っていなければならない。


 やはり実体経済は産業界の指数動向が示すと見るべきだ。そのためには海外展開した企業の国内へUターンを促す政策を執るべきだ。米国企業の多くは既に中国から米国内へ回帰しつつある。その背景には米国政府の強力な国内回帰への誘導政策がある。


 


 国内から海外へ企業が展開する状況では国内雇用が改善されるはずがない。従って国民所得が改善されないのは当然の帰結だ。だから日本も大胆なUターン投資減税を行うべきだと提唱してきた。


 既に円安により関税が30%程度切り下げられたのと同等の効果を持っている。海外へ展開する必然性は半減している。あとは経営者の確固たる意志の有無によるだけだ。日本の企業が日本の国民経済への寄与を義務と考えないとしたら、その企業に日本の経済を語る資格があるだろうか。


 


 グローバリズム至上主義者たちは同時に新自由主義者たちだ。彼らは自由な経済こそが「神の見えざる手」だと主張し、神に委ねるべきだと尤もらしく言うが、それはつまり国籍なき利益追求に他ならない。


 だから企業の社員は「一億円年収と100万円年収」とに二極分化されるだろう、と空恐ろしいことを平然と言い放つのだ。それはつまり米国内で起こっている1%の富裕層と99%の貧困層とが存在する社会を容認するものだ。それはつまり19世紀のマルクスが目撃した英国の再現ではないだろうか。果たしてそれが人類の目指すべき社会なのだろうか。


 


 言葉に騙されてはならない。政府がなすべきは国民の全体的な幸せの実現だ。一部経営者の最大利益のために政府があるのではない。もちろん、日銀もそうだ。国民はマスメディアが囃したてるアベノミクスに浮かれることなく、為替相場と国際金融に巣食う投機家たちがいかにうす汚いハイエナかを見詰めて批判することだ。



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