安倍氏の言う三本目の矢(成長戦略)は有効か。
安倍氏は成長戦略に三つのキーワードとして挑戦、海外展開、創造をあげ、とりわけ労働市場への女性の参加を掲げた。そのために産休を3年とし、待機児童2万5千人を2年で解消するとしている。
さながらやる気のない官僚の作文を聞いているようだ。現在の夫婦共働きがダブルインカム・ノーキッズとなっている現状分析が産休の延長と保育園をドッと建てれば解消すると思っている点がなんとも能天気だ。共働きの夫婦が抱える問題を安倍氏は何も理解していないようだ。
妻が扶養者の場合と、妻も夫と同等の勤労者の場合の税金や社会保険料を夫婦で一体いくら支払うことになるか分かっているのだろうか。だからパートで年収130万円以下で抑えようとイジマシイ努力をしているのが理解できていないようだ。
夫婦共働き所帯の税や社会保険料のあり方を真剣に考えるべきだ。そして闇雲に保育園を建てて待機児童解消の美名のもとに官僚たちが焼け太る事態は避けなければならない。なぜ子供手当を削減したのか、妻も働くのが必ずしも素晴らしい社会だとは思わない。専業主婦の肩身が狭い社会が本当に良い社会なのだろうか。
成長戦略として挑戦や海外展開や創造が経済成長のエンジンになりうるのだろうか。日本は新規事業挑戦が容易な社会だろうか。そして一度失敗した経営者が再び挑戦するのに寛容な社会だろうか。考えるまでもなく、この国の金融機関は事業に対して融資するのではなく、担保物件に対して融資する旧態依然の状態にある。半歩たりとも進歩していないのが現実だ。
そして海外展開がなぜ成長戦略たりうるのだろうか。国内雇用を海外へ持ち出せば、国内の雇用が減少するのは当然の理だ。アホな経営評論家が20年も前に提唱した海外進出への煽り講演を壊れたレコードのように今も回しているようだ。それらは焼畑経営者というべき愚劣な経営者のやることで、賢明な日本の経営者なら日本国民のために起業し、日本国民のために事業展開を考えるものではないだろうか。儲けさえすれば何をやっても良いということはないし、品質を重んじるなら日本国内で生産すべきだ。
創造も20年前の経営評論家が使い古したスローガンをそのまま使っているようにしか見えない。なぜ大胆に海外展開した工場や企業のUターン促進策としてUターン投資減税を大規模に行うべきだと発想しないのだろうか。国内に荒れ果てた工業団地用地は幾らでもあるし、赤字不採算飛行場は全国に幾らでもある。
空港を廃止しなくとも大型機を離着陸させずに、コミュータ空港にして後の広大な土地に工場を誘致すれば良い。それなら東京とのアクセスは新幹線がなくても便利だ。全国の塩漬け土地の有効利用を図れば、景気はそれだけでも上向くだろう。とりわけ地方の景気が良くなるはずだ。
経済成長のエンジンたり得ない御題目を並べて得々としている安倍氏の顔を見ていると、彼は事業経営も貧乏所帯のやりくりも何も解っていないと溜息をつかざるを得ない。