経済連携の利点よりも脆さと戦略性にこそ目を向けるべきだ。

  ユーロ参加国の一つ、四国の半分ほどの島に80万人ばかりが暮らすキプロスという国があり、その財政破綻が昨日の日本のダウ平均株価を300円ばかり引き下げた。それはユーロがキプロスの財政破綻を救済すべく1兆2千億円の金融支援することを決めたことによる。


 つまりユーロの信認が低下したためで、キプロスに対してユーロ中央銀行が課した財政再建策である国民の銀行預金を7%弱から9%の償却を求めたことから他の財政悪化が伝えられるユーロ圏内の国にも同様の措置が波及するのではないかとの懸念が広まったためだ。


 


 欧州が共通通貨ユーロの実施により細々とした為替管理の必要がなくなり、自由な交易と人の交流が促進されたのも事実だが、ユーロ圏の国が一つのバスケットに盛り込まれた林檎のようになり、一つが腐ると次々と腐りかねない事態に陥ることが判明した。それはユーロ圏のGDP全体に比較して僅かな割合でしかないキプロスの破綻ですら甚大な影響を世界へ及ぼす事態へと発展する。それが通貨統合という負の側面だ。


 


 最初、経済的には弱小4ヶ国が議論していたTPPに米国が入ったことにより、経済連携から環太平洋自由貿易圏の形成へと戦略的な経済連携に性格を異にした。そこに日本が入って、聖域なき関税撤廃とそれぞれの国が採っている政策が自由貿易を阻害すると企業や投機家たちが判断したら世界銀行傘下の紛争処理センターで最低を下すことにして、貿易や投機資金に関するそれぞれの国家主権をも裁くというものだ。


 ユーロが通貨統合なのに対して、TPPは通貨統合はないものの国家の仕組みを米国流に統合しようという企てだ。たとえば日本だけに存在する「軽基準」は非関税障壁として紛争処理センターへ提訴される可能性が高いし、そうなれば日本の「軽基準」は撤廃すべきとする裁定が下される可能性が高い。つまり日本の主権ですら貿易の非関税障壁と認定されれば否定されることになる。


 


 非関税障壁の対象となるのは軽基準だけではないだろう。貿易に関するすべての契約書は英語で書かれるべきで、書式すべてを米国流に従わなければ非関税障壁だとイチャモンをつけられるだろう。貿易の場面や投機関係の場所で使用される言語は英語でなければ非関税障壁だ、と裁定されれば日本国内でもしかるべき場所では英語を使わなければならなくなる。テレビにも英語字幕を表示するように義務付けられかねない。そのうちフィリピンのように独自の言語が公の場から追放され、日本国内でも英語が公用語に取って代わられるかもしれない。


 


 そんな馬鹿なことを、と思うのは能天気な連中だ。米国は自己流を世界に押し付けてきた。たとえば自衛隊の装備品はすべて米国流のインチ仕様で、日本のJIS規格は用いられていない。だから自衛隊の車両ですら特別仕様でベラボーに高価なのだ。到底戦争で消耗するような代物ではない。


 日本は独立国家として出来る限り世界基準に準拠している。独自の尺貫法を排し、独自の度量衡の文化を否定してでも世界基準に従って来た。しかし今後は米国基準に従うことになりかねない。バカバカしい限りではないだろうか。


 TPPが実施されると直ちに米国基準が入ってくる可能性が高いのは建築現場だろう。1間とか1坪とかいった概念は米国からすれば「非関税障壁」だろう。日本独自の建築の度量衡は廃止され、米国流のインチ・ヤード方式に置き換わるかもしれない。日本の建築文化は著しく阻害され、年月が経過するうちに継承されなくなる可能性が高い。それでもTPPは「自由貿易」の新しい枠組みでしかない、と寝惚けたことが言えるのだろうか。



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