海外での活動は自己責任で。
アルジェリアのプラントで作業していた日本企業の従業員がテログループに拉致・人質に取られる事件が発生した。それに対して日本政府は邦人の人命尊重に重きを置いて交渉するようにアルジェリア政府に要請したが、アルジェリア政府は事件発生後一日とたたず武力鎮圧行動に出た。
現在人質となった邦人17人のうち7人程度の安否が確認されたが、依然として10人ほどは未確認のままだという。かなり情報は断片的で錯綜し、アルジェリアの特殊部隊による任務は遂行中とされ、まだまだ事態は流動的とされている。
アルジェリア政府の性急な武力投入に対して賛否があるが、アルジェリアの主権下で起こったテロ行為に対して当事者はアルジェリア政府だ。その政府がテロ行為に対して話し合いの余地はないと特殊部隊の投入を直ちに決めたのは、それなりのアルジェリア政府の判断だ。なぜならアルジェリア南部国境地帯にイスラム過激派が拠点を持ち、サハラ砂漠を自由に移動して近隣諸国に無法行為を繰り広げている現実がある。だからアルジェリア政府は断固として武力地加圧する態度を見せなければテロの連鎖を呼び込みかねない。
日本の企業が技術力を買われて世界の工事現場で働くのは需給関係だが、危険の存在は邦人を派遣する企業や現地大使館が「危険情報」を発信すべきだ。実際、アルジェリアに関して外務省は危険情報を発していたようだが、日本企業は現地で働く際にテロ行為の危険防止を労働条件に入れていただろうか。
働いていた現地企業は英国の原油採掘世界企業のB&Pだという。当然B&Pには武装テロ集団の標的の一つになっていることは事前に分かっていたはずだ。なぜ傭兵による厳重な安全管理をしていなかったのか、世界企業にしてはお粗末だというしかない。
世界へ社員を派遣する企業は危機管理を十分にしたうえで実施する必要がある。アフリカ北部のみならず、中南米などの大陸やソマリア沖やインドネシア近海などの危険地域の存在は分かっている。そこへ出かけなければならないのも国際社会の中で生きるために必要なのも理解できる。しかし邦人の安全確保は事前に準備することは出来るし、今回の事件を契機に十二分な安全管理をまず企業が自己責任で確保する必要があることをもう一度喚起しなければならない。