国家情報管理にハッカーを利用せよ。
内閣官房情報セキュリティーセンターの指摘により農水省にハッカーが侵入し環太平洋経済連携協定交渉を巡る事前文書など3000点以上が海外へ流出している疑いがあることが判明したという。いわゆるサイバー攻撃は韓国からなされ、ハングル文字が操作画面に残されていたという。
TPP交渉は協定が締結されるまで交渉内容は一切秘匿されることになっている。それが国家間の取り決めなら、正式参加前の事前交渉であろうと日本の農水省から内容が漏えいすることがあってはならない。
まさか、と疑いを抱かざるを得ないのは、省益のためにTPP参加交渉を困難にする意図があって外部と接続したPCに秘密文書を放置していたのではないか、という農水省の未必の故意だ。
流出したと疑われる機密文書は政府機密性の統一規範3段階のうち2番目に該当し<漏洩により国民の権利が侵害されるか行政事務の遂行に支障を及ぼすおそれがある情報>に指定されているものだという。そうした国家機密に属する文書を記憶させたPCをインターネットに常時接続していたのかと懸念を持つ。農水省内部のイントラネットで使用していれば漏洩することはなかったはずだ。あるいは霞ヶ関内部のネットで外務省とやり取りしていればハッカーの侵入は防げるはずだ。
米国では国家最高機密は世界の命運を握るため、ハッカー攻撃への備えを絶えず最新のものにしている。そのため元ハッカーを雇い入れてセキュリティの開発を競わせていると聞く。ネット・セキュリティは絶えざるイタチゴッコで攻撃する者と防衛する者との熾烈な開発競争を演じている。
そうした面で日本の内閣官房セキュリティーセンターの人員がどのような構成になっているのか全く不案内だが、外国との交渉機密文書の漏洩は深刻な事態だとの認識を持たなければならない。機密漏洩を公表していない農水省の態度は理解に苦しむが、臭いものに蓋では済まされない。実態解明と徹底した防止策に霞ヶ関は取り組むべきだ。