痛みはもう沢山だ。

  官僚の広報誌だからなのか、マスメディアには痛みを求める発言が「格好良い」と歓迎する風潮がある。それに乗ってか橋下氏が「これからはすべて痛みを国民は負うんです」と威勢良い発言をして見せた。すると産経新聞の「主張」子が「社会保障政策 逃げずに「痛み」をもとめよ」と主張している。


 それでは世界各国の電波行政と比較して、日本のマスメディアはテレビ局支配によるクロスオーナーシップの容認と、大甘な電波行政の恩恵にドップリと首まで浸かっている現状を自ら改革しようとは思わないのはなんとも解せない。まずはマスメディアが特権的な地位にぬくぬくとしている現状を自己改革しようと提起すべきだ。


 


 社会保障の議論に関しても、国民に痛みを求めよ、と提言するのは簡単だ。現行制度を維持すれば現役時代に高額所得を得ていた者は厚生年金制度や共済年金制度により自動的に高額な年金を手にする。その仕組みを抜本的に改めず、現役世代に更なる痛みを求めるのはいかがなものだろうか。


 何度もこのブログで書いてきたが、社会保障は「負担は応能負担で、支給は一律支給」というのが原則だ。医療保険制度はまさしくその原則により運営されている。しかし年金制度は一律支給とは著しくかけ離れた制度がこの国の常識になっている。


 


 社会保障のうち年金の支給総額は平成22年で年間51.1兆円(国民年金18,5 厚生年金25,8 共済年金6,7)となっている。そして65歳以上のわが国の人口は平成22年時点で男女合計で2944万人(全人口の123,1㌫)だ。人口で年金支給総額を除すれば一人当たり年間年金額が算出される。簡単な算数の問題だから各自で一度電卓を弾いていただきたい。そうすると一人年間約173万円という結果が得られるはずだ。


 


 上記の数字を基にして考えて頂きたい。65歳以上に支給されている年金総額を65才の人口で割ると一人173万円の年金を手にしていることが分かる。しかし国民年金加入者の平均支給額は年間50万4千円でしかない。


 現行の年金社会保障制度が国民に告げているアナウンスは国民年金加入者は死ぬまで働け、という意味だろう。一生懸命満額納付した者ですら年間80万円程度の暮らせない年金を手にするだけだ。この年金制度の著しい格差は一体なんだろうか。


 


 さらに無年金者や引きこもりで65歳に達した者には年金は当然ゼロで良い、と主張する人がいるが賞罰的な議論には賛成出来ない。日本国民であれば65歳に達した者には等しく年金が支給される国にしておくべきだ。現役時代には「負け組」で散々苦しんだ人たちが年金でも差別され失意のうちに生涯を終える社会が良い社会だろうか。「勝ち組」の人たちが虐げてさらに優越感に浸るのは一種のサディズムではないだろうか。


 


 人生の最後のリセットが65歳に用意されている方が望ましい社会ではないだろうか。働く強迫観念から開放されて、社会奉仕に精出すも良いし自らの自伝を執筆するも良い。海岸の苫家で潮騒を聞いて生涯を送るも良い。子や孫に囲まれて忙しく生涯を送るも良く、現役として働き続けるも良い。そうした社会が実現できればどんなに平和だろうか。そして当然のことだが65歳以上の国民には生活保護は適用されず、一律年金が実現すればすべての国民はインカムにおいて平等となる。


 


 最低一律支給制度を更に進めて、65歳以上の国民が一律年金を受け取るとすれば、現行年金会計規模で誰でも年間173万円を手にすることが出来る。夫婦であれば346万円という非正規勤労者の平均年収を遥かに凌駕する金額だ。それなら国民すべての老人が餓死せずに暮らしていけるだろう。


 


 既に子育ても終わり教育費負担もない老人世帯に400万円を超える年金が必要だろうか。その一方で月額10万円、年120万円にも満たない年金で極貧の生活を強いられている老人がいる。しかし現在設置されたばかりの社会保障改革国民会議でも民主党が2009マニフェストで掲げた最低補償年金制度は自公の拒否にあって否定され、現行年金制度の小手先の改革で折り合っている。


 


 まず年金改革を大胆に行う気があるならば、一律支給とすべきだ。憲法の定めにより国民のすべてが文化的で最低限の暮らしを営む権利を有しているはずだ。それを保障すべく政治家は働いて年金制度を立法化すべきだ。しかし高給を食んでいるシロアリ諸氏が退官後も高給を手に出来る仕組みを温存したいが為に「国民に痛み」を求める、と官僚たちの広報機関のマスメディアに言わしめている。 


 さらに国民負担を求めるのではなく、社会保障のうち年金会計は支給総額が現行の大枠の50兆円を超えないと決めることだ。さらに国民すべてに年間120万円の年金を最低年金として支給し、残りの部分を厚生年金と共済年金の保険料額の比例部分に回すことにして激変緩和とすべきだ。


 将来的には少しずつ最低年金を上げてすべての年金を一律支給へと移行すれば良い。格差社会は現役時代だけで沢山ではないだろうか。引退後にも俺は大将でお前は下士官、そしてあいつは一等兵だ、と社会保障に格差を設けて心密かにほくそ笑むというのはいかがなものだろうか。


 


 国民は十分に痛みに耐えている。痛みに耐えていない者がいるとすれば、その冠たる者は官僚たちだ。つぎに高給を食む地方から国までの議員諸氏の報酬だ。だから政治家が世襲の家業として成立するのだ。そうした者の特異な権益をまず国民の平均的なものに改めるべきだ。しかし地方議員の中には極めて薄給で働いている村会議員や町会議員がいる。彼らの声にも当然、耳を傾けるべきだ。



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