通貨当局の無策は政治家の怠慢だ。
2008年9月のリーマン・ショック直前は1ドル108円台だったものが、今日現在では77円台にまで円高になっている。わずか数㌫の関税撤廃が貿易拡大に必要だと息巻くTPP参加論者たちはなぜ実質的に30㌫近い関税と化している超円高に言及しないのだろうか。
本気で日本の経済戦略を考えるなら当然超円高を是正しなければならない。既にGDPの14㌫にまで減少している貿易額をさらに減少させる必要はなく、米国がプラザ合意で円高へ踏み切った当時ですら日本の貿易額はGDP比20㌫でしかない。
それに対して中国は36㌫で韓国に至っては52㌫と米国が黙っているのが不思議なほどだ。なぜ20㌫の日本に対しては内需拡大を要求して円高策を強要したのだろうか。それで一気に240円程度から120円へと上がり、最終的には80円台にまで進んで日本の主要貿易品目だった造船や生活雑器産業が大打撃を受けた。
現在の中国や韓国は自由貿易を謳っているが、実質的に通貨安を国策として実行しているのは公然の秘密だ。特に韓国はウォン安で日本の家電や自動車の輸出先を狙い撃ちしている。これほどアンフェアーな通貨策はないだろう。
日本の通貨当局はなぜ徹底した通貨安策へ踏み切らないのだろうか。彼らは日本のことよりも他国の経済を主に考えているのだろうか。そうした疑念を抱かざるを得ない。
通貨策に政治家は口出ししないというのが原則だが、ここまで超円高を放置している通貨当局の無策ぷりに黙っていては政治家ではないだろう。評論家やマスメディアを恐れず、政治家が政治的判断を超円高に対してすべきではないだろうか。