明治政府が不平等条約撤廃を目指したのは治外法権と関税自主権だった。

 明治政府が江戸幕府の締結した外国との条約で、不平等条約として撤廃に努力したのは治外法権と関税自主権だった。時の欧米列強にとって、世界を知らない江戸幕府の幕閣を言い包めて不平等条約を認めさせるのは簡単なことだっただろう。


 そのため当時日本国内で定められていた金銀交換比率が世界の金銀交換比率に比べて銀を重くしていたため、大量の金が欧米の貿易商によって海外へ流出したという。


 


 日本国民なら貿易の相手が世界的な取り決めを知らないで不利益を被りそうな場合はキチンと世界慣行を教えた上で契約を取り交わすだろう。無知に付け込んで濡れ手に粟の稼ぎを目論むのを潔しとはしないだろう。日本国民にはそうした「人のよさ」があるが、世界各国の大半の国民は「人のよさ」は「バカ」と同義語だということを忘れてはならない。


 


 現代の治外法権は日米地位協定だ。明治の先人が血のにじむような努力で撤廃を果たした治外法権を敗戦後の日本人は愚かにも米国と再び不平等条約を結んでしまった。何としても日米地位協定は撤廃しなければならない。その代わり、急いで整備すべきは「有事法制」だ。そして有事の場合は自衛隊も米軍も同じ日本の有事法に従う原則を打ち立てることだ。


 


 関税自主権を脅かすのはTPPの中に地雷のように埋め込まれているISD条項だ。それは日本国内の安全や福祉や環境や慣習を日本国内の基準で決められなくする飛んでもない地雷だ。江戸幕府が無知に付け込んで締結させられた日米修好通商条約の類以上の不平等条約だ。そのようなTPPを急いで取り決める必要があるだろうか。


 


 関税の完全撤廃がそれほど素晴らしく貿易拡大に資するだろうか。例えば米国が日本から輸入している物品に高い関税を課して制限している物に何があるだろうか。ほとんどの工業製品は5%以内で太陽電池などは0である。だから関税を撤廃して日本からの輸出が劇的に増加することは望めない。反対に国内農業を守っている各種農産物に対する日本が決めている関税が撤廃されると安い米国産農産物が大量に入って来るだろう。それも米国の残留農薬基準に従った農産品や、遺伝子操作基準の農産品などが入って来ることになる。


 もちろん現行のコメや小麦などに課されている高率な関税制度がすべて良いとは思わない。漸次低率に改定されてゆくべきだろうが、それによって国内農業が打撃を受けないように緩和措置を日本政府が講じられる余地を残しておかなければならないのはいうまでもないだろう。


 


 最も賢明な方法は米韓FTAの推移を観察することだ。FTAによって韓国の産業にどのような影響があるのか、検証してからTPPに取り組んでも遅くはない。後入りでは対等な交渉が出来ない、という評論家がいるが、これまで日本政府が米国と対等な交渉をやった実例があったら教えて頂きたい。すべては米国流に押し切られて来たではないだろうか。


 


 関税よりも貿易で決定的なのは為替レートではないだろうか。ただ、円高は貿易輸出産業には打撃だが、輸入産業界にとってこれほど美味しいことはない。実際には相当な為替差益が生じていても、寡占に近い業界では国内製品価格を右倣えで決定できる。その製品の最たるものは石油製品だろう。この円高下でガソリン価格が却って1リットル160円まで近づいたのは何だろうか。原油価格が異常に高騰したから、という理屈を業界は説明として述べているが、かつての最高価格1バレル140ドルを越えたとでもいうのだろうか。嘘もいい加減にすることだ。


 


 為替レートが経済実態や貿易実態を反映しない動きになっているのは、通貨が投機の対象になっているからだ。FXという博奕のような投機をマトモな銀行も煽ったが、大損をした個人投機家が大量に出たため、銀行もさすがはここ暫くは派手なFXを煽るCMを控えているようだ。


 貿易とは関係ない為替レートを利用した投機を煽り、実貿易決済通貨量の数十倍もの大量の投機資金が為替市場に流れ込めばマトモな貿易までも阻害するのは誰が考えても当たり前だ。なぜ日本政府・通貨当局は「為替市場への投機資金流入制限」を国際金融の場で提唱しないのだろうか。それとも石油業界など円高で為替差益がジャブジャブ流れ込んでいる業界の圧力でもあるのだろうか。


 


 今後とも日本が自由貿易を基本とするのに異論はない。しかし「内需拡大」をこの期に及んでも提唱するバカな評論家には与しない。すでに日本の貿易は対GDP比14%まで落ち込んでいる。中国や韓国が「元」安政策や「ウォン」安政策により貿易拡大を続けて対GDP比36%に達しているのと大きな相違だ。これで日本の国内景気が浮揚するわけがない。バカげた「内需拡大」の掛け声をやめて、日本政府は貿易拡大に乗り出すべきだ。


 そのために円高対策を徹底して行うべきだ。やっと日銀が五兆円程度の金融緩和を行ったが、桁が1つ違うのではないかと目を疑った。一体誰に日本の通貨当局は遠慮しているのだろうか。そして、日本の通貨当局は誰のために存在しているのだろうか。基本的な問いを通貨当局に投げかけなければならない。



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