野田首相の言う「税と社会保障の一体改革」とはまやかしだ。
野田政権の目論む社会保障の全体像は一向に示される気配はない。ただ与野党協議を始めて野党案を丸呑みしてやろう、という決意だけがギラギラと見える。それでは野党は与党と協議出来ないだろう。
しかも政府案が切れ切れに示されるものを繋ぎ合わせても、矛盾だらけで最低年金を「税」で賄うとしつつ国民年金で厚生年金の雇用者分まで負担すれば、つまり厚生年金加入者の二倍支払えば国民年金加入者にも二階部分を支払(ってやる)という竹に木を接ぐような話だ。しかも、しかも、その完全実施は40年後だというのだ。それが国民に対する社会保障の「改革」だというのだから唖然とするしかない。
現行の国民年金満額受給者ですら6万6千円しかない。平均受給額は4万6千円だという。それなら一層のこと国民年金の掛け金を支払わないで、暮らしに困窮したら生活保護を貰った方が良いではないか、と国民年金加入者が考えても当たり前ではないだろうか。既に国民年金は徴収率が6割を切って破綻状態だという。そうした状態に即応するのではなく、完全実施が40年後の話を国会でやっているというのだから笑えて来る。
厚労官僚に丸投げするからこうしたバカな「改革案」が出て来るのだ。官僚たちにとって国民年金加入者が飢えようと死のうと関係ないのだ。かれらの3階建ての恵まれた共済年金が当面だけ破綻なく支払われれば問題はないという考えなのだ。それが地方公務員部分だけが破綻寸前になっているから慌てて厚生年金との一元化を目論んで「改革案」を提出したに過ぎない。
行政改革を断行して国家公務員も地方公務員並に定数削減すれば官僚たちも安穏としていられなくなる。地方公務員は平成の大合併により定数が激減し、数年後にはOB受給者が現役公務員数を超えてしまう。つまり厚生年金の受給者一人を何人の現役世代で支えるか、という年金掛け金値上げの図式が公務員に関しては逸早く仮分数になるのだ。しかし、その事実を官僚たちは口が裂けても公表しない。すべては「国民」のためにやっていると大手マスコミに広報させてきた手前、自分たちのためだとは言えないのだ。
こんな馬鹿げた辻褄合わせの創作文を国会で審議している暇があったら、被災地へ行って豪雪に苦しむ人たちの雪掻きの手伝いでもしたらどうだろうか。40年後の「気の抜けたビール」どころの話でない、誰も信じない絵空事に一日数億円もの国会開設経費を費やすのすら勿体無い。少しは極寒の風に吹かれて与野党議員は頭を冷やすことだ。