国際化という美名に隠された誤魔化しに気を付けよ。
日米修好条約により江戸幕府は開国を断行したが、欧米の諸制度に疎かったため騙すようにして不平等条約を他愛なく呑まされ、その解消に明治政府は心血を注ぐこととなった。その間、日本が蒙った不利益は計り知れないほどだった。
今度はTPPだという。関税などの貿易障壁をすべて撤廃するだけでなく、これまで関税障壁ですらなかった事柄までも関税障壁として「撤廃」を求められかねない。たとえばこの国の医療保険制度は米国の民間企業が実施している医療保険を阻害するものだとして提訴されかねない。その場合、審判を下す裁判所は日本になく、米国の息のかかった国になりそうだ。それでもTPPを急がなければならないのだろうか。
必ずしもグローバリズムが国を富ましてきたとは限らない。一面、激しい競争にさらされて消えて行った産業もある。それも時代の趨勢として切り捨てるのがグローバリズムということなのだろうか。
日本人は勤勉にして適応力の高い国民だから少々のことではへこたれないだろうが、あえて困難な道を選ぶ必要もないだろう。TPP加入を後押しする評論家たちには米国の意図が明確に分かった上でのことなのだろうか。それとも規制緩和や自由化が関税撤廃に通じるから、TPP加入を声高に叫んでいるだけなのだろうか。いずれにせよ外交交渉はポーカーなどのギャンブルではない。すべての手の内をさらして対等に話し合うべきものだ。米国がそうしない内は日本は米国の設えたテーブルに着かないことだ、どんな落とし穴が待ち構えているか分かったものではない。