経済は生き物だ。
現状の景気と経済状況を固定的に捉えて「社会保障と税の一体改革」とは為にする議論でしかない。かつて日本の税収は70兆円を超えていた。その当時と比較すれば現在の税収42兆円にいくら消費税を積み増せばかつての税収規模に到達するのか。その答えは「分からない」ということだ。つまり想定が固定的から、増税により景気がさらに落ち込み「直接税」関係は軒並み減収となり、消費そのものも低調になれば消費税も減収になりかねない。
財務省やその下請け広報機関たる大手マスコミが現在の財政赤字を捉えて財政危機を演出するのなら、財政危機にある国家としての歳出のあり方を厳しく問わなければならない。公務員人件費関係の総額は余りに膨張しすぎている。国民の理解を超えて官僚たちは巨大なシロアリとなって国家財政や地方財政を食い潰そうとしている。企業が赤字になれば人件費が削減されるのが企業再建策の本筋だ。しかし公的会計にはそうした作用は働かないようだ。
国会で話し合うべきは「いかにして増税すべきか」ではなく、この滅茶苦茶な為替相場による危機的な日本の輸出産業の苦境について対策を考えるべきだ。官僚や経済評論家が国内需要の喚起と馬鹿の一つ覚えのように唱えて、遂にGDPに占める貿易割合が最低になっている。2006年JETROの発表した資料によるとかつては3割近くもあった日本の貿易対GDP割合は14.8%にまで減少している。それに対して中国や韓国やドイツは軒並み30%を超え(中36.6%、韓36.7%、ドイツ38.7%)イギリスでさえ18.7%と日本よりも外需依存だ。ただ輸出すべき製造業関連製品を持たない米国だけはあれほど高額な兵器をせっせと輸出しても7.9%に低迷している。
余り米国の要求に従順になって「内需だ、内需だ」と叫ばないことだ。日本は本来貿易立国だった。その本質を歪める発想が日本にとって良くないのは明らかだ。まず為替レートに流れ込む投機資金の規制を国際会議で話し合わなければならない。そのために国内論議を深めることだ。国内景気を直撃する消費増税議論により国家財政が好転するとは決して思えない。IMFという隠れ蓑を着た財務官僚や米国の意図に従うほどバカげたことはない。日本は独立国家として、国益を真剣に追求すべきだ。