10年1日のごとき政治状況を憂える。
使い古した常套句のように野党が2閣僚の問責決議を出し、与野党協議はすべて暗礁に乗り上げて「波乱含み」で国会は通年通りに閉会した。
しかし冷静にこの国の政治を取り巻く状況は国内にあっては3.11の百年に一度の大災害に見舞われ、世界金融にあってはユーロ諸国の中でユーロ金融危機をもたらしている債務国救済の枠組み構築を巡って英国から異論が出され大きな亀裂を生じたまま危険な綱渡りを演じている。こうしたた危機的な要素を多く抱えた国の政治状況としては何とも気の抜けたビールのような与野党政治家たちではないだろうか。
そして公務員賞与は対前年増額の満額が支出され、財政危機など何処の話だ、といった状況が展開されている。財務省主導で財政危機を煽って国会での増税審議を後押しした大マスコミが公務員賞与の満額支給に異論を唱えないのはなぜだろうか。彼らが吹聴する「財政危機」とは国民から絞り上げる「税収不足」だけが問題なのであって、歳出構造の底が抜けていても一向に気にならないようだ。
国会は、しかし閉会してしまった。今国会法案成立率は34%と前代未聞の低成立率だ。その中でさっさと所得増税だけは成立した。何ともお粗末にしてバカな与野党国会議員たちだ。さっそく野党自民党党首たちは街頭に出て「問責決議をした閣僚を首にしないのは問題だ」「来年の国会審議はすべて拒否する」と怪気炎を上げていたが、何とも能天気な話だ。
被災地の人たちは明日の見定めさえできないで越年する。企業経営者も常軌を逸した「円高」に真綿で首を絞められる日々の年末を迎えている。明るい見通しのない新卒就職状況下で高校3年生や大学4年生たちは不安な新年を迎えようとしている。それなのに国会は早々と閉会して政治家たちの多くは選挙区へ散った。有権者廻りという10年1日のごとき「ご機嫌伺い」に年末年始を過ごすのだろうが、それが大災害に打ちひしがれ未だに収束していない福一放射能漏れの原発を抱え、東電のおざなりな被災者補償も政治家たちは問題としないで選挙区へ帰ってどんな説明をするのだろうか。
与党は野党の独善をあげつらって自分たちの官僚下請け政権の無能・無策を棚に上げ、野党は政権の体たらくを批判して「解散風」を吹かして歩くのだろう。しかし、国民はそんな愚かな政治をしてもらうために税から大枚を頂戴する政治家を選出しているのではない。彼らの就職先確保と名誉心涵養の為に政治家に選出しているのではない。この国と世界のために働いてもらうために選出している。ユーロ圏で協議を重ねている間、この国の首相はどんなメッセージもその会議に対して発しなかった。しかし、ユーロ圏の債務国救済の枠組み構築には日本から拠出するカネは必要不可欠なのだ。カネだけ出せ、しかしあとは黙って蚊帳の外にいれば良い、とでも言われているのだろうか。なぜ日本の首相なり財務大臣なの通貨当局者はその会議に出掛けて「日本はあなた方が決めた枠組みに協力するのにやぶさかではないが、そのためには日本経済を苦しめている異常な円高対策も同時に考えてくれ」と、なぜ言わないのだろうか。
この国の政治家たちは相も変わらずコップの中の嵐を演じて悦に入っている。官僚たちも政治家たちをバカな永田町の常識に閉じ込めて、与野党を不毛な政争に仕向けてほくそ笑んでいる。ただただこの国の政治状況の迷惑を蒙って、不利益に甘んじなければならないのは国民だけだ。それでも国民は年末年始のどのチャンネルを回しても同じような顔ぶれのお笑いテレビ番組に笑い転げ、タレント評論家たちの「この国の政治に対する嘆き節」を視聴して溜飲を下ろして、いろんな危機的な状況を忘却するのだろうか。いや、そうではないだろう。国民は10年1日のごとき政治状況に心からの怒りを燃え上がらそうではないか。