外交のあり方を日本の大手マスコミはとやかく言える立場なのか。
日本の大手マスコミはおしなべて日本の国益を損ない、日本の独立国としての尊厳を傷つけてきた。近くは大手マスコミ発の「従軍慰安婦」や「靖国参拝」や「歴史教科書」などを問題として近隣諸国に焚き付け外交カード化したことだ。
日中関係に特定しても、かつて田中総理が国交を開いたが、たちまち米国議会から弾劾の「ロッキード贈収賄」事件が飛び込んできて田中角栄氏は政治生命を絶たれた。それも冷静な法律論理に照らせば、随分と日本の独立国家としての尊厳を傷つける「田中角栄氏の失脚」を狙った司法当局の恣意的な捜査であり、特別法「外国での司法取引による証言を証拠採用」を行った裁判所の自殺的行為といわれても仕方のないものだ。しかし、当時それらを批判する大手マスコミは皆無だった。嵐のような田中金権批判に国民は感情的に田中角栄氏を忌み嫌うようになった。
この国が法治国家であるならこの国の政治家にとって奮起すべき時に、彼らは沈黙してしまった。現在進行している小沢氏の場合とまったく同じ構図が透けて見える。
日中外交は野田首相一人がやっているのではない。日常的には外務官僚が任に当たりそれぞれの駐在大使などが話し合っているのだろう。しかしつい先日、日本の外務省は中国の対北朝鮮脱北者に対する「強制送還」という国際難民法に悖る行為に日本の駐中国外交館に協力するように求めてきて、日本の外交館もそれに応じる取り決めをしてしまった。まさしく日本の独立国家としての自殺行為を軽々に行ってしまった。
外交とはテーブルの上ではにこやかに握手して、テーブルの下では足を蹴りあっているものだ、というほど権謀術数の渦巻く世界だ。そうしたタフな外交を日本の外交官はやっているのだろうか。チャイナスクールといわれる中国当局の接待攻勢で懐柔された日本の外交官がいることは周知の事実だ。その後、彼らが大挙して他の部署へ異動させられたとは寡聞にして知らないから、いまも対中外交に当たっているのだろう。そうした実態を考慮せず、野田首相という官僚の操り人形と化した政治家を論っても仕方ないだろう。彼は年明けにも首相でなくなる人物だ。それよりも、チャイナスクールといわれる外交官としては失格の連中を処分しなければこの国のまともな対中外交は始まらないだろう。
この国の劣化は政治家の幼稚化だけではない。官僚の省益あって国益なし、省益あっての官僚だという姿勢を殆ど批判してこなかった大手マスコミの責任も重大だ。たかが「パンダ」という野生動物を見物として煽り立てる姿勢こそ、すべての物事に対する大手マスコミの基本的なスタンスだ。生息地から切り離して日本の檻で飼うことが、自然保護とどのように噛み合うのかご説明願いたい。