沖縄の米軍基地問題に対して、沖縄県民の感情を煽ることでどんな解決の道が拓けるのか。
防衛大臣のバカさ加減を今更あげつらうつもりはない。どのような経緯と選挙戦略からこのような政治家が当選を重ねて来たのか、日本の民主主義の底の浅さを痛感する。政治家のレベルは決して選挙民のレベルを超えない、という箴言は真実なのだろうか。もしそうなら、選挙民もバカだということだろう。
バカな沖縄駐在の防衛官僚が「犯す」発言をした。酒の席のたとえ話であろうと、これは重大な問題を含んでいるが、そもそもその程度のバカが防衛官僚として日米基地問題の愁眉の的の沖縄に赴任していたという事実に愕然とする。防衛省の背広組に人材は払底しているのだろうか。それとも戦争なき戦争遂行組織はこれほど腐るものなのだろうか。
いうまでもなく彼らは防衛戦争に備えているのだが、幸いなことにこれまで防衛・自衛隊組織構築以来一人も「戦士」していない。そのことが背広組の精神的な腐敗を招いているのだろうか。
一川氏は防衛大臣としてよりも、人間として根本的に欠陥があるといわなければならない。弛緩仕切った防衛省背広組に対して、バカな防衛大臣ではお話にならない。そして野党・自民党も「沖縄少女暴行事件を知らないのか」と国会審議で防衛大臣に詰め寄り、大マスコミも「普天間移設の契機となった事件を知らないのは防衛大臣として不適だ」と扇動するのもいかがなものだろうか。なぜなら国内米軍基地に所属する米兵による日本女性への暴行事件は沖縄だけの問題ではないからだ。日本各地で起こっている「日常的な」問題なのだ。そして日米地位協定」という不平等条約により、日本女性の多くが泣き寝入りしている。
普天間基地移設運動の直接的な要因はむしろヘリコプター墜落事件ではなかっただろうか。2004年8月13日午後2時15分頃にアメリカ軍普天間基地所属の大型輸送ヘリコプターが訓練中にコントロールを失い、沖縄国際大学1号館北側に接触し墜落炎上した事件だ。しかもその事故直後にアメリカ軍が現場を封鎖し、事故を起こした機体を搬出するまで日本の警察や大学関係者が現場に一切立ち入れなかった。さらに当該機のローターの氷結による亀裂・劣化の検出に安全装置として、ストロンチューム90という放射性物質が6個のステンレス容器に納められており、機体の炎上により一つが損壊し、識別不可能になった。
米国大使館の報道機関への回答によれば、ストロンチウム90は機体の燃焼、熔解で気化した可能性が高いとされたが、ストロンチウム90の沸点は1655Kである事を考慮すると米国大使館の説明に疑念も残る。そして、アメリカ軍によって土壌や機体は回収されてしまったことで詳細を解明することが困難になった。そうしたことが日本の捜査当局が関与できない状況で一方的になされた。この事件が契機となって普天間基地及び沖縄米軍基地に対する沖縄県民の反対運動が起こったのではなかっただろうか。物事の本質を感情的な事件にすり替えるのは厳に慎むべきことだ。
バカな防衛官僚の「犯す」発言に絡めて沖縄少女暴行事件を自民党国会議員が引き合いに出した。しかしそれだけが普天間基地移設運動の直接的な引き鉄になったのではなかった、という事実確認をしておきたい。時として大マスコミは事件を煽るために故意に事件を変貌させることがある。そうした大マスコミの策動を国民は冷静に見抜き、事件の本質を判断しなければならない。なぜなら感情論は一時的に大きく燃え上がるが所詮は感情的でしかないからだ。
あらゆる交渉は理詰めに進めなければならず、沖縄の米軍基地が唯一無二のモノとして、沖縄と日本の国防に必要とされるものなのか、客観的に判断しなければならない。
劣情に訴えた元自衛官の国会議員は劣情により国政を判断する人物ではないかと危惧する。防衛・外交に関わる国政はむしろ冷静に国際的な利害関係と錯綜するパワーゲームの解を求める行為に他ならない。沖縄県知事と県議会議長も防衛大臣にあからさまな不快感を示したが、それらは大人げない行為に他ならず「民主党は最低でも県外といったではないか」と詰め寄るのが本筋だったはずだ。それともかつての自民党が懐柔策として示した「特別補助金」と、それにより辺野古沖案を一度は飲んだ沖縄を「特別補助金が欲しいだけだ」と米国の日本担当部長が指摘したが、それが本音だと認めるのだろうか。今回の「犯す」発言により喚起された劣情を利用するのは自民党国会議員と大マスコミだけにしてもらいたい。