日本の成長戦略に本気で取り組もう。
米国は基幹産業だった自動車産業の最後の生き残りをかけたオバマ戦略が完全に破綻したようだ。乾坤一擲の賭けとしてGMやクライスラーに巨額な政府資金を投入して国有化し、同時に米国で故障しない車として定着していたトヨタの信頼を打ち砕く狂言芝居を米国議会の公聴会で演じて見せた。トヨタのレクサスやプリウスのアクセルペダルが戻らなくなって暴走した、というバカバカしい狂言芝居を、こともあろうに米国議会の公聴会で行ってトヨタの信頼を失墜させようとしたのだ。その場にトヨタの社長まで招聘して批判の嵐に曝した。
しかし一年ばかりたって、トヨタ車が暴走した原因は運転者のブレーキとアクセルペダルの踏み違いだったとの結論が出た。明らかにオバマ氏は米国の自動車産業を再生させるために最大のライバルであるトヨタを狙い撃ちしたのだ。しかし、その企みの効果は一時的でしかなかった。燃費の良い故障しないトヨタの信頼はいささかも揺らがなかったのだ。
そして今、米国は何を企んでいるのか。電気自動車だという。ガソリン自動車は部品数が3万点に及び、なおかつ精密な機器は米国人の手に余り、とてもではないが勤勉で緻密な日本の作業員に適わないとオバマ氏は悟ったようだ。それなら部品の数にして10分の一程度で済み、精密な機器はモーターだけで良い電気自動車に未来を託そうとしている。
それに合わせて米国大好きな日本の評論家たちは何の根拠もなく「将来は電気自動車だ」とほざきだした。米国の鸚鵡でいればこれまで先進的なオピニオンリーダーで通ったから、今回もいち早く米国政府発のアナウンスに便乗して騒いでいる。それがいかに愚かなことか、彼らは真剣に検証しているのだろうか。
日本で消費されているガソリンの総カロリーを電気のワット数に換算してみれば、現在のガソリン車だけでもすべて電気自動車にすればどれほどの電気が必要になるのか算出してみると良い。現在でも節電をお願いしている電力会社に電気自動車の充電が殺到する夜間に発電所をフル回転しても到底間に合わないのは明白だ。
しかも現行の電気自動車で使っている最良の電池はリチウムイオン電池だ。皆さんが良く知っているPCのバッテリーのあれだ。5Vの電池を無数に集積して床に敷き詰めて直列のユニットを束にして使っているのだ。それがどの程度で劣化するか、PCを利用している人なら良く承知しているはずだ。電池とは、しかし、そうしたものなのだ。
トヨタは世界で認められた電気自動車の先進企業だが、決して電気自動車をウリにしないのは電気自動車の限界までも見通してのことだろう。だから基本的にガソリンエンジンから離れないハイブリッドを進化させているのだろう。社会インフラとして整い、多くの人が暮らしの糧としているGSを重視した自動車作りをしているのも現実的といえるだろう。
ハンドルを握っていてこの自動車が走らなくなりはしないかと少しでも心配になると、たちまち利用したくなくなるものだ。フル充電で僅かに200キロないし300キロしか走らない自動車は街中を走るバッテリーカーとしか呼べず、とても地方都市の日常生活で一日中は使えない。つまり公園で100円玉を入れて遊ぶバッテリーカーと大して変わらない。
そんな電気自動車に熱を上げて日本まで不器用な米国人の発想に付き合う必要はない。世界には電気が満足に通っていない国は無数にある。それらの国々にどうやって電気自動車を売るつもりだろうか。それよりも国家戦略として燃料電池の小型化に全力を注ぐべきだ。ただ燃料電池に使う水素の純度がかなり高くなければならないのが現在の燃料電池の隘路だ。それを克服しなければ純度の高い水素の製造コストに頭を悩ませなければならないだろう。
さらに日本には水素で走る世界で唯一の車を造っている企業がある。広島に本社のあるマツダのロータリーエンジンがそうだ。一度は製造を止めるとしていたが、再びロータリーエンジンを積載した車を造るという。ガソリン車としては燃料効率から支持を得られなかったが、燃料電池ではない、直接水素を燃料として走る車だということは未来に向かって輝かしいことではないだろうか。
水素は水を電気分解しても得られるからサハラ砂漠など利用価値がないとされている土地に大量の太陽電池を敷き詰めればサハラ砂漠は電気供給基地になり得るし、電気分解すれば水素製造基地にもなり得るだろう。
水素製造の原料としては日本の近海に大量に埋蔵されているメタンハイドレートを利用すれば良い。そうすれば日本は資源大国となる可能性を秘めている。その道を拓くのは研究開発だ。ゆめゆめ電気自動車が未来の乗り物だという大手マスコミの大宣伝に惑わされないことだ。あれは単にガソリン自動車製造企業の救済策に失敗し、財政再建にも失敗し失業対策にも失敗したオバマ氏の断末魔の叫びに過ぎないのだ。