金正日後の北朝鮮は誰が実権を握るのか。
金正日氏亡き後、その三男が実権を握ったかのような報道は危険だ。まだ何ら実績のない、28歳の男に何が出来るというのだろうか。それが金正日氏の後継者として北朝鮮国内で認知されたかのように囃したてる大マスコミはどうだろうか。既に韓国紙の一部では金正日氏『暗殺説』まで出ている。人工衛星の監視によると金正日氏が利用している特別列車は、氏が列車内で死亡されたとしている17日はおろか、15日以降動いていないという。
100万兵士にすら食糧配給が行き渡らず、強い不満が軍部にもあったといわれている。事実、日本に小さな漁船でやって来た脱北者は兵士だった。先軍政治と称して軍部最優先の政治を行っていた北朝鮮で、兵士たちですら飢えている状況はかなり危機的だ。彼らの一部にでも、政治は国民に対して責任を負うべきものだ、という世界の常識を体得している人がいれば、金正日氏暗殺説も頷けるところだ。それならその勢力が北朝鮮の政治体制を現実的に抑え、放送局や軍部までも掌握していることになる。相当綿密に計画され実行されたクーデターがあったと見做さなければならないだろう。
そんな北朝鮮の現政権が暴発して破滅する道を選ぶとは思えない。中国は金正恩氏を中心とする政権を支持する態度を表明したようだが、金正日氏とコミットして北朝鮮の地下資源などの権益を手にしてきた中国はそうするしかない。しかしもしも金正日氏の死亡がクーデターによるものなら、中国の北朝鮮政策は根底から崩れることになる。もしくは根本から見直さなければならないだろう。日中外相が電話会談で北朝鮮の情勢を巡って安定を求めると談話を発表したが、日本外相の唐変木には中国の苦境が分からないのだろう。絶対に中国を通じて北朝鮮と対話をしてはならない、日本は独自に北朝鮮政府と対話すべくシグナルを送ることだ。
北朝鮮の金政権が核開発をしたのもミサイル開発できたのも露国と中国の暗黙の了解と支援があったからだ。北朝鮮の「先軍政治」を可能にしていたのは露国と中国の思惑であり、それにより国民の食料を購入すべき外貨が核兵器やミサイルに化けたのだ。中国に取って望ましいのは北朝鮮の経済と民政が安定して自立することではなく、いつまでも愚かな政権が継続して半島が不安定化し続け北朝鮮政権が中国だけを頼りにすることだ。日本政府の望む方向とは決して永遠に交わらない政策だ。北朝鮮情勢に関して中国と対話して何か解決したことがあっただろうか。それは米国も同じことだ。米国にとっても北朝鮮の国民が飢えて苦しもうと、半島が安定しない方が日本を強くグリップできる。
結果として国民は飢え、何百万人という人たちが餓死したのだ。そういう政治体制が良いと思って継続を願うものが何人いるだろうか。たとえ特権的な地位にいる者としても、そうした現実に少しも心が痛まないとしたらろくでなしだ。日本政府はろくでなしでない北朝鮮政府高官たちが誰なのかを見極め、彼らとの対話を進めるべきだ。