官僚の罠にはまった年金議論。
年金支給開始年齢の引き上げ議論があってからここ数日、年金議論は見事に官僚の術中に嵌ったようだ。いずれも現行の「保険」制度を前提として年金をいかにして維持するかを議論しているに過ぎない。これでは官僚の術中に嵌ったも同然で、そもそも論から始めなければならないところに到っている年金の危機に関して何も解決できないだろう。
国家の一義的使命は国民の生命と財産の保全である。その生命の保全に直接関わる医療と年金が「保険制度」で運用されていることになぜ疑問を抱かないのだろうか。国家として当然行うべき使命であって、ゆえに国民は「税の徴収」と「国防」を国家に委託しているのだ。当然のこととして税の徴収に対しては国民は義務として納税を行っている。国防に関しても普通の国家なら国民が国防の任に当たるのだが、日本は憲法により普通の国家よりも一段と低い「軍備なき防衛」という摩訶不思議な状態に放置されている。
国防はこの際さて置くとして、国民の生命の保全に関しても本来は「税」により行うべきなのだ。決して「保険制度」で行うのが本筋ではない。それをさも「保険制度」こそが金科玉条のもので、現役世代の職種により各種格差を設けて「官僚たちが一番」の仕組みを作り上げ、その維持に血眼になっている。破綻させてはいけない、と必死になっているのも現行格差を維持するために破綻させてはならないと大マスコミを通じて増税と負担増を国民に吹き込んでいるのだ。
税により行うとすれば支給金額において国民すべてが平等な老後を送ることになる。公務員だったから平均支給額が30万円を超え、会社員だったから平均支給額20万円足らずで我慢しろ、自営業者や農林水産業者は暮らせない年金・平均月額4万6千円で死ぬまで働け、というのを前提として議論することに何ら違和感を持たないとしたら、徹底した大マスコミの報道によりマインドコントロールに陥っているとしか言いようがない。
税により行うために「消費税増税」が必要となれば国民に堂々とお願いするしかないだろう。しかしその代わりに厚労省管轄の医療保険や年金関係の職員をリストラし、その外郭団体に流していた膨大な補助金はすべてカットできるしやらなければならない。そうしたコストだけでも年間いくらになっているか、暇な人は試算してみると良い。
少なくとも年金の一元化は直ちに行うべきだ。すでに国民年金の納付割合は60%を切っている。若年層に限っていえば50%も切っているという。今後莫大な数の未年金者が出現して、それらが生活保護対象者に移行すると見込まれていることから年金も含めた社会保障で将来の年金のあり方を考察しないと飛んでもないことになるだろう。だから保険制度を柱とする年金のあり方は既に破綻していると見なければならない。それでも公務員共済年金は破綻しないから、それだけを維持すればよい、との認識で議論だけおざなりに行う、というのなら不誠実そのものではないだろうか。
抜本的な年金改革として年金一元化と税による公平な年金支給のあり方を議論の俎上にあげる時期にきているのではないだろうか。現行制度がいかに大きな矛盾を孕んでいるかを認識しない議論はすべてその場限りの官僚による独善的なビホウ策といわざるを得ない。