通貨管理と為替管理を分離しなければ。

  ギリシアのデフォルト騒ぎに端を発したユーロ暴落が今回の国債為替相場混乱の端緒だった。そこに米国のオバマ大統領によるケインズ的景気対策グリーンニューディールによる米国内のドルばら撒きと、イラクからアフガンへと続く米国の戦争により海外でもドリ垂れ流しをもたらした。そこに来て米国内の債務超過が最悪となり、米国債の信認が米国内の格付け会社でも手におえないほど下落し、追認する形で格下げせざるを得ない事態となった。


 


 それが今回の国際経済の混乱の姿だ。日本の破滅的な国債残は、しかし国際経済では日本の財務省や大マスコミが喧伝するほど破滅的だとは受け止められていない。その証拠が未曽有の円高となって現れている。


 ここで問題にしなければならないのは為替相場の混乱だ。米国はかつてドル高により日本からの集中豪雨的輸出に悩みプラザ会議で日本に円高誘導を強引に呑ませた。それにより1ドル240円だったものが120円前後へ急騰し、最終的には80円台まで達した。国内の輸出産業は円高の直撃を受け、繊維産業は早くに衰退していたが洋食器産地などを壊滅的にした。


 


 そうしたことから生産拠点の海外移転が促進され、日本政府もそれを後押しした。米国はかつてプラザ会議で日本の輸出攻勢を「失業を輸出している」と非難したが、現在の円高は世界が日本に失業を輸出している。しかも副次的な問題として国内産業の空洞化も招き、日本の労働市場は二重の意味で嵐に見舞われている。


 世界各国の財政状態を各国が責任を持って改善するのは当然だが、それが為替相場に反映される現状は必ずしも感心できない。投資家がより安定的で利益を生む国債へ投資するのは理解できる。しかし思惑により通貨を購入し通貨に投機資金をシフトさせるのはいかがなものだろうか。


 


 国際為替レートは純粋に貿易決済レートであるべきだ。各国の財政状態からデフォルトするかもしれない、との思惑から各国の国債相場が変動するのは当然だし、国際基軸通貨ドルへの為替レートも各国ごとに変動するのも当然だが、しかし貿易決済の面からだけを純粋に評価すれば円高になる要素は何もない。日本の国内景気は決して強含みで推移していないし、失業率は最悪だ。国内行政改革は遅々として進まず、コスト高で非効率な官僚組織も手つかずだ。旧式エンジンも摩耗の限界に達し、機械部品もがたついている。そうした日本という自動車に、増税によるガソリンだけブチ込んでアクセルを全開すれば何とか走るのではないか、と日本の財務省と通貨当局は考えているようだ。しかし、果たしてそうだろうか。まずは国際経済と国際通貨管理とその結実として表現されている国際為替相場の適正化への徹底した議論をするのが先ではないだろうか。


 


 おざなりにG20の当局者が集まって懸案解決に合意したと気勢を上げても何にもならない。国際為替相場を歪めている国家為替管理の撤廃と、巨大投機家の行動を規制・制限するのが、最も正しい解決策だろう。そうした話し合いを始めるべきだが、そのネックはユーロ圏ではユーロ安で輸出攻勢をかけてぼろ儲けしているドイツであり、国家管理の通貨安で輸出攻勢をかけている中国であり、ドル安を政策の中心に据え大国の体面もかなぐり捨てて景気・雇用対策に躍起になっている米国だ。そして投機家の多くが米国に拠点を置く米国企業なのも問題だ。米国政府の政策決定はロビィストの影響を受け易い議会がカギを握っているからだ。


 しかし、それでも米国政府は真摯に反省して為替相場に洪水のように流れ込む貿易外決済資金の流入を「投機資金」と規定して制限すべく対策を国際会議で提起しなければ、世界各国は最終的に投機家の思惑で財政・通貨政策を決定せざるを得ないという主客転倒した現象に見舞われることになる。いや、既にそうなっている。


 おざなりな怪気炎を上げるだけのG20よりも実質的な会議を提起する必要が日本の通貨当局にある。なによりも現行の国債為替管理で一番の貧乏籤を押し付けられているのは日本だからだ。



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