理念なき国家。

 何事に対しても国家としてどのような方針で臨むのか、政府の軸足がブレ続けている。


 TPP参加は見送るそうだ。賛否両論あるにせよ、現実としてこの国は貿易立国だ。国内消費だけでは何事も成り立たないのは勿論のこと、資源も輸入を仰がなければ国家経済は破綻する。自由な貿易こそが日本にとって不可欠なら、相手の求める「自由な日本」をある程度満たさなければ関係がぎくしゃくするのは当たり前のことだろう。


 


 デパートやビール業界の消費が落ち込んだようだ。これも当然のことで、少子高齢者社会で消費が上向くことはない。今後とも対前年比で必要となるのは斎場とお墓だろう。国民の平均年齢が毎年上昇する国家に活性化を求めるのは無理なことだ。


 それでも政府はこの十月を目途に「子供手当」を止めるという。ついに官僚と大手マスコミの軍門に菅政権は下ってしまったようだ。最低でも十年は続けて少子化を食い止める効果があったかを検証した上で決めるべきを、菅政権は無責任にも大手マスコミや評論家諸氏の批判の嵐に屈したようだ。


 


 人口減の国家に活性化を求めるのは間違いだ。最近のテレビはリタイヤした人たちが海外のコンドミニマムなどで優雅に暮らしている人たちを特集していたが、こうした傾向が続けば年収200万にも満たない若い世代が年金年収400万から500万の公務員のリタイヤ組を食わせるために税を払い続け、それを彼らは海外で消費する。そういう構図が出来てしまったらこの国の貧困化はさらに進行するだろう。テレビ番組とはいえ、何んとも愚かな特集をするものだ。


 


 原子力安全保安院の発表では原発の事故深刻度がレベル7になって、チェリノブイル並みになったという。これも主客転倒した話だ。レベルが上昇したから深刻なのではなく、事態が深刻なのを認識したからレベルが上昇したのだろう。しかし得たりとばかりに、原子力安全委員会は先月23日に「レベル7の認識をしていた」と後になって発表した。そんな話は必要ないし、今になって発表してどうなるというのだろうか。後出しジャンケンなら誰でも勝てる。いい年をした大人が子供じみたことはしない方がまだ良い。


 


 この国は肝心なところで溶解している。明確な理念もなく、波間に漂う難破船のように大手マスコミの起こす風に吹かれ、自力で推進装置を動かして目指すべき方向へ向けた航海を放棄しているようだ。いや、すでに羅針盤すらないのだろう。ただただ自分が船長でいられれば満足なのだろうから、風に逆らうこともないと達観しているのかもしれない。


 その行き着く先は東電の撒き散らす金にまみれた大手マスコミの原発無批判と政府組織の「安全」に対するお目付け役利権化と、取り込まれた御用学者の希薄な危機感の末の深刻な原発事故に象徴されている。つまり、誰も国民を第一に考えない巨大な自己チュー国家の一員になっているのだ。


 


 つい最近まで東電丸抱えで福島原発へ「安全確認」ツアーが東京から出ていたという。それに便乗していた連中は少しは恥を知るべきだ。東電に警鐘を鳴らさなかった原子力学者は速やかに学会から去るべきだ。いや東電だけではない。沖縄を除く全国の電力会社は原発を保有しているから、各電力会社の宣伝役として「安全性」を宣伝していた学者たちは自らの学問を真理の追求ではなく、商売道具とみなしていた不遜な態度に反省しなければならない。原子力は扱いを誤ると大変危険なものだと、彼らは知っていたはずだ。知っていて十分な安全対策を電力各社に求めなかった態度は糾弾されてしかるべきだろう。


 


 菅氏も原発事故の初期に事故現場へヘリで飛んでいくという愚行を犯した。原子力の怖さを知らない無知のなせる技としか言いようがない。


 今年の十月をめどに子供手当を止めて、この国をどうしようというのか。菅氏の頭の中には人口が半減した老人大国の日本へ隣国から大量の移民を仰ぐ我らの子孫の図が見えているのだろうか。そうとでもしない限り、ここまで整備してしまった社会インフラを維持できないのは明白だ。たとえば人が棲まなくなった廃屋がたちまちツタや蔓に絡まれて山の一部と化してしまう現実を都会の人たちは知らないのだろう。百年後、人口半減社会の日本は国土の半分以上を放棄しなければならないし、都会の道路や橋の更新も困難になっているだろう。



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