それでも米国の実効性を疑う。
クリントン国務長官が尖閣諸島も安保条約の範囲だと表明しても、条約の第5条は自動的に米軍が出動することにはなっていない。米国議会の同意を必要としていて、たとえ大統領の一存でも米軍を動かすことはできないのだ。条文では自動的に米軍が動けるのは米軍基地や米国大使館や領事館、それに米軍属の住居地などがが攻撃された場合に限定されている。
世界に展開する米軍基地の経費負担率が75%にまで達しているのは日本だけだ。韓国は45%程度でサウジアラビアですら65%前後だ。米軍を日本に貼りつけているのはむしろ日本の国の意思なのだ。お願いして日本にいてもらっているのが現状なのだ。
世界が冷戦構造下の時代にあった米国の軍事戦略では日本に駐留軍を配備する積極的な意味があっただろうが、今は米軍に日本駐留の積極的な意味はない。中国と米国は敵対する勢力ではなく、お互いに国益を分け合う関係ですらある。その立ち回りは旧ソ連より中国政府の方がしたたかだ。だから日本は米国に佞て、思いっきりポチ化政策を邁進すべきだ、というのが日本の大マスコミの趨勢だ。よって日米対等に立とうとした鳩山氏を執拗に叩いて退陣へ追い込んだ。
日本の金融資産を搾り取ろうとする米国政府の思惑にコミットした小泉政権は長期政権を許されたが、少しでも日本の独立自尊路線を示せば安倍氏のように官僚のサボタージュにあい潰される。中川昭一氏も金融で日本の立場を世界へ明確に示そうとして珍妙な酩酊会見を仕組まれ退陣に追い込まれ不可解な死を遂げた。
小沢氏も日本の独立自尊を訴えて大マスコミによる捏造「政治とカネ」プロパガンダにより民主党代表の座を追われ刑事被告人に仕立てられようとしている。
日本人はいつからかくも政治的思考を放棄したのだろうか。国際政治は熾烈な権謀術数の渦巻く世界なのだ。各国が国益を実現すべく鎬を削り相手を貶めようと策謀を張り巡らしている。そこへのこのこと無防備な思考しかできない日本人が出向けばたちまち身ぐるみ剥ぎ取られるだけだ。実際に現実はそうなっている。
日本人は少しは目を醒まそう。日本の大マスコミは当てにならない。戦後GHQと取引して存続を許されて以来、日本の大マスコミは日本国民の視点で日本を見ていないと考えなければならないだろう。彼らは一様に駐留米軍に寛容で自衛隊に冷淡だった。今もそうだ。
これまでも述べてきたが、日米同盟は永遠に続かないし、米国のプレゼンスが永遠に世界に及ぶこともない。日本は日本独自の世界戦略を打ち立てなければならない、という現実に思い至り、日本国民はもっと真摯に取り組むべきだ。尖閣諸島も米軍の範囲にある、という言質を米国務長官から引き出したとして安堵する日本とは何だろうか。まだまだこの国は独立国とはいえない状態にあるが、そうしているのは日本の大マスコミだ。