国際通貨の在り方を問う前に。

 まずこの問題は米国に責任があり、世界の基軸通貨として米国ドルの自律的通貨量制御をしなければならない。米国大統領が中間選挙で与党民主党の苦戦を乗り切るために、不評を買っている景気を回復し10%に迫る失業率を劇的に回復して国民の信頼を繋ぎとめるために大型の公共事業(グリーンニューディール)を行ってきた。しかしその効果は芳しくなく、国内景気はなかなか浮揚せず、失業率の回復も見られない。


 


 新たにオバマは景気対策実施を迫られ、さらにドルをタレ流そうとしている。しかし中間選挙を乗り切るのは困難な状況にあるようで、併せてアフガンの戦争も先の見えない泥沼に突入している。オバマは指導力を問われ、米国内では任期半ばでクリントンと交替するのではないかと悪いジョークまで流れる始末だ。


 


 そうした米国の政権弱体化ぶりによって国内政策が手詰まりとなると常套手段として国民の不満を外に求めなければならない。それが日本の円高介入というわけだ。


 IMFの日本批判を米国と分けて評する必要はない。最も多額の金を拠出しているのは日本だが、実際の運用は米国の意のままに操られているからだ。第二の米国の財布といっても良いくらいだ。


 


 しかし米国が日本の円高介入を批判するのは筋違いだ。日本の円高はそれぞれの国内経済の反映により自動的に形成されたものではない。投機的な資金の大量流入によって円が買いまくられて形成されているものだ。したがって日本の経済状況を反映しない円高は日本経済を歪め、日本の国民経済を窮地へ追いやっている。それに対して対策を打つのは政府と円通貨当局としては当然のことだ。国民生活を守るという点からいえば「権利」ですらある。


 


 米国が問題とすべきは「元」だ。世界的にまだ信用が確立されていないため円のように「元」に対しては投機的な投資はなされず、中国政府による「元」の固定相場運用により国際的な各国為替とは懸け離れた存在になっている。その安く固定されている「元」の為替相場を背景に中国は世界へ輸出攻勢をかけ、米国でも輸入相手国としても一番になっている。つまり米国へ失業を輸出している相手国は中国であり、中国に世界基準で貿易を行うべきと勧告すべきだろう。米国下院では制裁措置を取るべきとする議論があるようだが、なかなか実施に踏み切れないでいる。日本の場合にはスーパー301条の実施などをちらつかせて強硬に円切り上げを求めたのと大違いだ。


 


 むしろ日本は米国が示す円高介入への不快感に遠慮せず大胆に介入すべきだ。その場合、為替相場だけに介入しても効果は限定的・短期的だ。それよりも米国に負けないほど円を世界へタレ流すことだ。円の価値そのものを下げるより他に手はない。そのやり方は欧州ユーロを真似ることだ。欧州はギリシアやポルトガル、ハンガリーなど国家財政危機に見舞われている国々を救うためにユーロをジャブジャブに垂れ流している。しかし米国は欧州に対しては何も文句を言っていない。ただ円までが円安に振れると米ドルが比較として高くなるため米国の輸出力を殺ぐから反対しているのだ。つまり日本が円高に喘いでも米国は素知らぬ振りをし、中国が「元」安政策で輸出攻勢をかけるのには「制裁するぞ」と脅すだけで何もしていないで、欧州に対しては一切文句すら言わない。一体日本の立場は何なのだろうか。ついに米国の踏み台とされ、属国以下になってしまったのだろうか。


 


 日本経済は菅政権のもたつきもあり、この年末に向けて経済対策の端境期を迎えて失速する恐れが出て来た。不当に円安政策を取るのは国際金融秩序を乱すため許されないが、相当の円安相場へ誘導するのは円通貨当局として当然の権利だ。国内企業を守り国内景気を浮揚させるためにも円安へ向けて実効性のある対策を強力に遂行する必要がある。米国には日本景気が底割れしそうな状況を政府は充分に説明する必要があるのは言うまでもない。



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