元安による輸出圧力はいつまで続くのか。
中国は国際社会で極めて自己都合の振る舞いを繰り広げている。その最たるものが『元』の為替管理だ。弾力的にする、と固定制相場の枠を緩やかなものへ移行していくかのようにメッセージを発したが、その後も「元」は極めて狭い固定制の枠の中に封じ込まれたまま、安いレートで輸出攻勢を「自由貿易」の名を借りて行っている。
国際的なルールの通用しない国は国際的な信用も得られない。ただ拡大する経済の魅力に吸い寄せられて世界の投資が中国へ集中しているが、加熱する経済が様々な軋轢を生まないわけはない。米国は悲鳴を上げ米国議会では「制裁措置」を講じるべきだと議論が沸騰している。オバマが国内の10%に迫る失業率改善に全力を注いでも、中国が米国へ失業を輸出しているため、中国の輸出攻勢を止める手立てを取らなければ意味のないことになっている。
しかし同時に中国と米国は互いに相手を必要としている実態は両国の輸出・入割合が全体に占めるそれぞれの相手国が占める割合を見れば明らかだ。
軍事的にも両国は戦う相手としては強大になり過ぎていて、共存するしかない状態になっている。しかも米国政府に影響力を持つ投資家集団が中国に莫大な投資をしているため、むしろ経済関係では協力関係にあるといえる。
日本は日米安保が日本を守るいう防衛システムが時代遅れになりつつあると認識しなければならない。米軍は米国のために存在する。決して日本のために存在するのではないのだ。しかも日米安保条約は日米どちらかが「ヤメタ」と通告すれば終わる仕組みになっていることを忘れてはならない。
米国は日本の為替相場をプラザ合意で強引に切り下げさせた。しかし中国に対しては非を鳴らすだけで中国首相を米国に呼びつけて切り下げさせることはできないでいる。そこが国家防衛を米軍に依存している国と独自の軍事力を保持する国との違いだ。日本が空念仏の平和憲法を有難く頂戴している限り、世界のどの国にも頭の上がらない状態に甘んじなければならないだろう。それだけでなく、一方的に国益を奪われても堂々と文句の一つとしていえない状態に日本国民は置かれ続けるのだ。
やがて石油資源の奪い合いから中国の国益と米国の国益が激しく衝突する事態が起こるだろう。近代化された社会では石油の一滴は血の一滴だ。中国は急ぎ過ぎて近代化の波をかぶっている。中国国民は以前の前近代的な状況へは引き返せないだろう。すでに中国経済は破綻の予兆を孕んでいる。国家財政も破綻の危機に瀕しているし、元のレートもいつまでも低く設定し続けることは許されないだろう。その時に何が起こるか、日本国民は自国の防衛を自前で賄う覚悟を固めて冷静に対処しなければならない。