IT化のネックとは。
総務省が光ファイバーをすべての家庭に引くと国内ブロードバンド環境の整備に乗り出した。現在IT機器の進歩は目覚しく、PCやサーバーの能力は一世代前のフムイムコンピュータを凌ぐほどだ。ただ、IT機器の進歩に電話回線と電子交換機の性能がついていかず、それが大きなネックとして立ちはだかりつつあった。
今後クラウドコンピュータが一般的になって端末のPCはシステムソフトすら持たない時代がやってこようとしている。そのように素晴らしい勢いで情報化社会は展開しようとしてるが、Win2000の保守サービスが終了して行政も含めて数十万台ものPCがサイバー攻撃に対して脆弱な存在となっている。
マイクロソフト社は企業戦略として次々と新しい基本OSを販売し、売り上げを上げようとしている。確かにそれまで脆弱といわれていたOSの欠点を改良して進歩しているのも理解できるが、基本OSはPCにとってまさに基本だ。それをプラットホームとしてアプリケーションを乗せてPCを稼動しているのは常識だが、その基本OSの保守サービスが終わるのはなんとも解せない。たとえぱWIN2000を基本Sに採用していた人口3万人規模のある市では300万円を支払ってとりあえずは「延長版」を導入してサイバー攻撃に対応するとしている。しかしそれも半年延ばしの措置に過ぎず、根本的な解決にはサーバーからすべて新しいOSにやり変えなければならないという。
Win2000でも大変だが、2014年に保守サービスを打ち切るWinXPの場合はもっと大きな混乱をもたらすだろう。全国各地の自治体と企業の多くはWinXPを基本OSに採用している。その期限が来れば多くの自治体と企業は経費面から新OSへシステム変更できないのではないかといわれている。そしてマイクロソフトでは重いと不評だったWinVistaを早くもあきらめてWIN7を基本OSとしたPCを売り出している。企業や自治体の多くはここ数年の間にWinXPからWin7へと移行するしかないが、その支出は膨大な金額になる。
もはや現代社会でIT抜きは想像できないだけでなく、ITなしではまともに社会が機能できない状況になっている。それなのにWin型PCでは基本OSは売り物で、すべてマイクロソフト社の製品を買わなければ動かない仕組みになっている。なんということだろうかと憤慨せざるを得ない。
たとえば電話をかけるのに、発明したエジソンがパテントを有するダイヤルを回さなければ掛からなくしているとする。そうすると暮らしに深く浸透している電話をかけるためにエジソン社のパテントを使わなければならないことになる。しかし、そのパテントは何年かおきにやり変えて、新しいパテントを所有しないと電話通話にノイズが入り込むとする。
エジソン社は大もうけだが利用する者はたまた物ではない。だが、そうしたことがPCでは起こっているのだ。本来は無料で空気のような存在であるべき基本OSを販売し、それも不完全なもののため絶えず手直しをし、それでもサイバー攻撃に対抗するために絶えず進化し続けなければならないのだ。これからは金儲けのために始めた商売の仕組みが、社会をIT化して利便性を高める時に大きく邪魔をする事態になりかねない。
日本はe-Japan計画の段階で時の総理大臣森氏が米国の圧力に負けて基本OSにWinを採用することに決めた。当時、日本には日本人の発明によるトロンという基本OSがあった。それを採用すべきとしてトロン型のPC開発も行っていた。トロンは基本OSは空気と同じで無料との開発者の考えからリナックスと同様にオープンソフトだった。
日本はいつまで情報の基幹をWinに依存するつもりだろうか。総務省は伝達手段の高速化は推進しても、ついに基本OSの国産化へ踏み切ろうとしないのはやはり米国に遠慮してのことなのだろうか。情報産業の基幹をマイクロソフト社に握られたまま放置し続けて良いとは決して思えないのだが。