大敗の責任は

 会わないとする小沢氏の真意は分からないが、菅首相と枝野幹事長体制で臨んだ参議院選挙で大敗した責任を誰が取ったのか。しかも選挙で落選した法務大臣をそのまま大臣として任務を果たしてもらうとするなど、選挙結果について不透明なまま政権運営をするなど、菅氏の考え方が良く分からない。


 


 選挙が国民の意思表明だとすれば、菅氏が示した「消費税増税」は否定されたわけだ。世論調査でマスコミは国民の半数は是認方向だとするが、世論調査は政権運営の指針になっても決定になるわけではない。


 


 今回の参議院選挙ほどマスコミによる政局づくりとマスコミによる選挙介入とも思えるほどの有権者への影響力を発揮したことはない。これからの政治はマスコミを配慮しつついかなる扱われ方をするのか政策の提示方法に関しても意を払わなければならなくなるだろう。


 


 毎週のように繰り返される電話聞き取りによる世論調査と、意味不明なスローガンによるキャンペーンと、国民世論を形成する手法を駆使しテレビで上塗りしていく。そのようにして作り上げられていく政局に振り回されて政権の意思が揺らぎ政策がブレまくった一年だった。


 


 誰もが何でも好き勝手に言うのが自由な意思表明だというのならネットの書き込みと何ら変わらない。それを商売として毎日安定的に用意されたメディアに意見を無署名で書き連ねるのは少なくともハンドルネームを必要とするネットよりもさらに無責任だ。大マスコミが政治的な立ち位置を隠したまま、公平無私であるかのような顔をして普天間基地移設問題では連日どのような報道をしたか、つい半年前の新聞を確かめてみれば良い。


 


 ここに来て興味深い方向をマスコミは打ち出している。菅政権に対して選挙敗北後は「甘い対処」方針に転じたようなのだ。お得意の世論調査結果として菅政権の支持率は引き続き低落方向だとしているが、菅政権は続けるべきだとする世論が過半数以上もあるという。これほど矛盾した世論調査も、マスコミにとっては矛盾したものではないようだ。


 


 こうした統計上の矛盾がなぜ出るのか、統計学者の意見を聴取してみれば良い。結論は明らかだ。サンプル調査をする者の質問に結果誘導の意図がある場合、ある程度のサンプルが誘導によって矛盾した回答がなされた結果だと結論付けるだろう。つまり対面して質問用紙を手渡してその場で記載してもらったなら、サンプルも自分の一個人としての意思が破綻していないか、他の質問事項との関連から矛盾していないかを検証しつつ答える。だからこのような奇妙奇天烈な世論は出てこない。しかしマスコミは少しも矛盾していないとして自分たちの調査方法を反省することもなく、これこそが国民の叡智だと報じてしまった。まさに裸の王様だ。


 


 政権を支持はしないが、菅氏が政権を継続する方が良い、というのは明らかな矛盾だ。マスコミによる電話を使った世論調査のいかがわしさは質問事項が詳細に報じられないことだ。たとえば「今回の参議院選挙で民主党は大敗しましたが、あなたは菅政権を支持しますか」と聞いたなら「支持しない」と答えるのは簡単だ。次に「日本の首相は毎年のように代わっているが、菅氏も厳しい選挙結果から辞任すべきですか」という聞き方をすれば、「ちょっとそれは勘弁してほしい」と答えるのが一般的だろう。さらには「責任を取って菅氏が代わるとすれば、次の首相候補には小沢氏が出てくると予想されますが、」と聞けばどうなるのか、聞き方次第でどうにでも誘導できる電話聞き取り世論調査で政局をマスコミが作り出す手法は許されるべきではないだろう。


 


 小沢氏が面会を拒否しているのは人として当然といえる。鳩山氏と二人して民主党政権のために幹事長を辞任した小沢氏に「お疲れ様」の一言もなく「しばらくは静かにしていてもらいたい」とは無礼千万だ。政界とマスコミは法的な常識とは大きく乖離して、いまだに「政治とカネ」なる文言を連発し、小沢氏に説明責任なるものが存在しているかのような論調で発言しているが、強制捜査にまで踏み切った検察の結論は「不起訴」だった。つまり問題は何もなかったという結論を出している。なにがしかの問題はあったというのなら「起訴猶予」という選択肢もあったわけだから、検察はまったくのシロと認定したわけだ。


 


 事務所のメモ一つ領収書の一枚に及ぶまで徹底的に持ち去られ、検察によって徹底的に洗われた結果シロとされた人を掴まえて「説明責任がある」というのは、道を歩く人を掴まえて「お前は無実だと説明しろ」と尋問するのと似ている。いかに人権を無視した無茶苦茶なことか、少し考えてみれば分かることだ。それを「市民」と称する誰も国民は知る由もない11人の検審会委員による極めて高度に法的な判断に基づく「公訴権」付与をマスコミは願っているようだが、それがいかに危険なことか考えが及ばないのは作為的という以外にない。


 もしもあなたが身に覚えのない「破廉恥な痴漢」行為で逮捕され一年以上もの取り調べを受けて「不起訴」となったが、それを市民団体と称する人たちによって検審会へ審査要求され「市民目線」から許されないことだ、と強制起訴されるとしたらどうだろうか。荒唐無稽な設定だと思わないことだ、そうしたことが小沢氏の身の上に降りかかろうとしている。


 


 自由な報道と民主的な政治手法を採用している日本では特定の人たちが特定の意を政治的に行使するのは困難だが、あらゆる手段と機会を通して政治家をコントロールしようとしているようにみえる。それが民主主義への甚大なる冒涜だとも疑わず一種のゲームのようにマスコミは熱中しているが、その意図は明白だ。


 突然に増税を口にした菅氏はその勢力に完全にコミットしたかのようだ。政権が死に体になればマスコミはさらに自由に政権をコントロールできるだろう。戦前、いかなる事態から政党政治が政権コントロールを失い軍部の台頭を招いた政治状況を学ばなければならない。その時、マスコミは何をしていたか。私たちはもっとマスコミに厳しい批評の目を向けるべきだ。彼らが犯した罪を彼らは微塵も反省もしていないし追及もしようとしないが、その罪深さは軍部の暴走以上のものだといわざるを得ない。菅氏に甘く小沢氏に厳しいマスコミの論調は大きな意図が隠されていると考えた方がマトモではないだろうか。


 



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