IT化が最も遅れている分野とは。

 いつもの薬をもらいに近所の開業医へ出かけた。そこの医師はまだ60前と思われるがカルテは手書きで、血液検査結果などは機器からプリントされて出る紙切れをカルテに糊付けしている。いつか湿疹ができて駅前の皮膚科へ行った折には30前後の女医が診察したが、彼女はPCディスプレイに表示されたカルテにキーボードから症状や処方箋を打ち込んでいた。どちらが効率的かは一目瞭然だ。医院内でイントラネットを構築していれば女医が打ち込むと同時に会計担当者に診察点数や診療内容が送達される。


 


 個人情報管理と秘匿性の問題からか、医療分野でのIT化は遅々として進んでいない。確かに個人情報でも病歴や今現在罹っている病気とその症状は他人に知られたくない最重要事項のものだろう。しかし、そのことを理由として医療全体の合理化を阻む合理的な説明にはならない。


 日本は健康保険が完備し、国民は等しく要した医療費の三割(一部では一割だが)の個人負担で世界でも高水準の医療を受けられる。そのため時としてカルテの改竄や水増しによる医療保険の不正受給医が問題になる。あるいは物理的に無理な患者数を毎日診察している開業医が問題になったりする。さらには行政でチェックするレセプト管理もIT化していればプログラムを組むことで概要だけでも一括管理できる。つまり病気や症例に対して想定される薬や治療が誤っていれば即座にチェック可能だ。あるいは常識的な薬の処方を超えているものもチェックてきるだろうし、何よりも複数の医院に罹る患者の複合薬害を防ぐこともできる。


 医師も人間だ。時にはミスをするかもしれない。もしもシステム化されたカルテがあれば人為ミスの多くは防げるだろう。そして患者の個人情報をITカルテに書き込んでおくことにより、たとえばペニシリン・ショックの既往症のある人が重篤な感染症により救急で搬送され問診できない状況にあっても医療事故を起こさないで済むだろう。


 


 確かに国家として国民のカルテを一括管理するのは漏洩や悪意ある閲覧などの危険性が付きまとうだろう。国民のカルテを扱う処理センターは機密管理と運営管理を慎重の上にも慎重を期さなければならないが、だからといって電子カルテの一括管理を永久にしない理由にはならない。いやもしかすると医療のIT化を是としない誰かがそうした人権家を焚き付けて反対しているのかも知れない。


 毎年膨張しついに30兆円を超えようとする医療費を支出する国家がITによる電子カルテを一括管理していないのは怠慢のそしりを免れない。ただ断っておくが、電子カルテを一括管理するシステムに住基ネットのような巨額な予算を必要とする巨大なメインフレームは必要ない。現在のIT技術で対処すれば普通の事務室に設置された数台のサーバーで十分に対処できるはずだ。そして個人を特定するのにも住基ネットのような意味不明な数字の羅列は不要だ。生年月日と出生地と漢字表記の氏名(ルビを付して)と本人が設定する4ケタ程度の暗証番号で十分に個人を特定できるはずだ。そうすれば患者が日本全国の何処で受診しても間違えることはないだろう。いや世界の何処で受診してもインターネットで電子カルテを送付すれば既往症などはたちどころに分かることになる。


 


 菅総理がワンストップ・サービスを行うと施政方針演説で提唱したが、それこそ行政窓口がいかにIT化されていないかの証左だ。転入や転出でどの窓口へ行く必要があるか分かっているはずだが、それをお客様である住民を二十日鼠のように「あっちへ行け、こっちへ行け」と命じる。官僚ならではの上から目線だ。


 各地方自治体も旧世代の遺物のようなメインフレームをいまだに抱え込んでいる所が多い。この国の官庁はどうして原価意識と国民サービスが機能しないのだろうか。本来なら議員がチェックしてどんどん合理化させるべきなのだが、そうした能力に欠ける議員ばかりなのかと不思議に思う。


 しかし最早そうしたことは許されない。財政破綻が目前に迫り公務員の削減は喫緊の課題だし、経費削減に手を付けざるを得ない。国民はいつまでもIT化をサボタージュする官庁と公務員を許さないだろう。



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