大きな政府に路線転換か。

  民主党と国内最大の労働団体「連合」との政策協定が目指すところは手厚い社会保障とその財源確保の増税、ということに要約されるようだ。文言で煽るつもりはないが、民主党は「大きな政府」に路線を切り替えたのか国民に説明する必要がある。確かに小泉政権下で進められた極端な市場至上主義は強者と弱者の格差拡大をもたらし、結果として富の再配分機能の喪失と偏在をもたらした。大企業経営者の年間所得が一億円を超えるなどと、欧米では常識だが、日本では従来から儒教的な教えからより平等に給与配分を行うとする抑制が働きそれほどの給与格差は存在しなかった。それが中間層の拡大をもたらし社会的な安定を保っていたが、極端な市場主義により同じ人間を労働力の安全弁とする米国の考え方の導入(年次行政改革要綱という米国の要請によるが)で派遣業法の歯止めが外され、格差社会が進行して問題化した。


 


 そうした仕組みの是正は理解できるが、手厚い社会保障はともすると手厚い官僚制度と利権肥大化をもたらす。その弊害を除去するために公務員改革を実施すると民主党は先の総選挙のマニフェストに掲げたのではなかっただろうか。その端緒にもついていない段階で早くも見直しをするのでは国民の理解は得られない。


 国民は国家の米蔵に巣食って貴重なコメを食い荒らす鼠のような官僚組織の在り方をまずどうにかすべきと民主党に託した。そのための政治主導であり、官僚制内閣の打破だったはずだ。日米地位協定の見直しであり、米軍再編見直しだったはずだが、はかない希望のまま消え去り自民党時代へ戻ってしまった。何のための政権交代だったのだろうか。


 


 民主党と連合の協定案には「安定的政権基盤を確立し『安心と希望の社会』実現を」をスローガンに掲げ、民主党が取り組む「重点政策」として「新成長戦略の推進」ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)の実現」など9項目を提示。7項目に「所得再分配機能の強化など税制の抜本改革を進め、中期的財政再建の道筋を明示する」と記してある。何とも空々しい言葉の羅列だろうか。


 それでは実際の中身はどうなのかという各論の明記はない。働き甲斐のある人間らしい仕事を求めた結果が旧社会保険庁のPC操作要綱、45分を超えて操作をしてはいけない、その後には15分休むこと。そして一日5000タッチ以上やってはならない、などとおよそ民間企業では考えられない労働協約を結んでいたではないだろうか。公務員改革は喫緊の課題で仕事をしない職員が大きな顔をして民間企業の正社員を上回る給与を手にしている現状に国民は我慢ならないということが政治家諸氏に分からないのでは政権交代した意味がない。


 


  ■民主党と連合の政策協定案の重点政策は次の通り。


(1)新成長戦略の推進


(2)人間らしい仕事を実現


(3)就労・生活支援給付制度


(4)男女平等社会とワーク・ライフ・バランスを実現


(5)差別禁止、教育機会均等


(6)くらしの安全・安心確保


(7)税制抜本改革を進め中期的財政再建の道筋を明示


(8)「新しい公共」確立と民主的な公務員制度を実現


(9)低炭素社会、公正なグローバル社会の実現


 となっているが、具体的に分かっているのは増税して国民納税番号を創設し、子供関連の手当などを一括して「子育て基金」の創設を目指していることだ。それらがかつてどのような結果をもたらしているか、国民は熟知している。たとえば厚生年金基金は将来の安定的支給を目指すためとの創設意義は無視されてグリーンピアなどの巨大施設に横流しされた挙句地方自治体などにバナナの叩き売り以上に安値で売り払った。


 選挙は勝たなければならない。しかし、そのためには何をしても良いというのでは政党の見識が疑われる。人気の高いうちにやってしまおうとする動機は余りに稚拙でお粗末だ。マスコミが作り出した幻想のような支持率は一炊の夢と消えてなくなるものだと心した方が良く、一月後の選挙状況など現在の支持率で推し量ると大間違いするに違いない。もっと国民に顔を向けた議論をしないとマスコミは持て囃しても国民はそっぽを向くだろう。



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