マニフェストの重みを。
枝野氏や玄葉氏などが小沢氏の執行部批判に対してさっそく反論しているようだ。さすがは「イラ菅」を首相とする子供内閣の閣僚だ。子供の喧嘩のように一兵卒に向かって騒ぎ立てているのは何とも彼らが一兵卒に見えてくる。今選挙のさなかに彼らがなすべきは小沢氏への反論ではなく、国民へのマニフェスト変更の経過と丁寧な説明のはずだ。
前回のマニフェストは総選挙の前に取り纏められ、それを以て政権交代を果たした重いものだ。新政権では全力でマニフェスト実現へ向けて邁進すべきを、変更したことを批判されると「小沢氏は人気取りの発言をしている」と反論している。
はからずも前回のマニフェストが人気取りのものであったと馬脚を現した格好だが、さも現実路線へと切り替えた自分たちの方が正しいといわんばかりだ。
菅氏が税制論議を始める、と発言したのなら問題はなかった。しかし踏み込んで10%に言及したのは国民へではなく財務官僚に対する人気取りだ。直接支給も規模を縮小して制度事業を拡大しようとするのは官僚組織の肥大化をもたらすものだ。そもそもマニフェストの見直しをするように言ったのは当時の幹事長小沢氏かも知れないが、それを取り纏めて発表したのは現政権だ。しかし最終的に党内論議を経て機関決定されたものか、不透明な感は否めない。
一兵卒へと降格させた小沢氏も含めて、民主党は党内で議論したのか寡聞にして知らない。小沢氏に執行部批判させたくないのなら、すべての民主党議員が出席する議員総会にかけて新マニフェストを採択決定すべきだった。そうした手続きを経ていないのなら一兵卒議員の批判には真摯に耳を傾けるべきで、批判で返しては子供のようだといわれても仕方ないだろう。
新執行部の子供らしい不手際は小沢氏に対する反応だけではない。選挙のさなか選挙後に連立を組む相手候補の名を挙げるとは何事だろうか。現にいま組んでいる連立党に対して失礼なだけでなく、名を挙げられた党に対しても礼を失していないだろうか。いやそれよりも、与党だけでは過半数に達しないとの選挙分析でも出ているのだろうかと邪推されかねない。今は目の前の選挙に全力を尽くすべき時であって、同僚議員の批判に対して苛立ったり選挙後の政局を語ったりする時ではないはずだ。
彼らには大軍団を総指揮して選挙を戦った経験がないのだろう。目の前の事態に冷静な対応ができず、いたずらにキャンキャンと吠える小型犬のようだ。
マニフェストを簡単に弊衣のようにかなぐり捨ててはいけないのは当たり前のことだ。それを破棄する際には国民に信を問うために総選挙を実施するぐらいの覚悟が必要だ。官僚が「非常識だ」とマニフェストの実施を渋るようなら即座に官僚を更迭するぐらいの決断が必要なのであって、マニフェストの方を変更するのは主客転倒だ。仕事のできない、理屈だけ並べ立てる税金食いを雇っている余裕は日本にない。