中国「元」への切り上げ圧力。
米国上院は元切り上げ要請にこたえない中国に対して懲罰的な関税をかける法案を提出して対抗している。7年も切り上げ要請してきたが、もはや待てないと強硬姿勢を見せている米国に対して、中国では各国内紙で「元切り上げは国内産業に壊滅的な影響を及ぼす」と反対姿勢を明確にしている。
日本はかつて米国の円切り上げ要請にあっさりと応じたプラザ合意により1ドル240円だった為替相場が10年後には1ドル80円まで切り上げられた。その結果として日本国内の輸出産業がバタバタと倒産し、対米輸出の繊維産業や食器産業などが壊滅的な打撃を受けた。車も1万ドルカーを米国で売って240万円手にしていたものが10年後にはたった80万円しか手にできなくなり、強烈な下請けいじめが国内で展開され、それでも経費削減を吸収できない下請け企業は中国へ工場を移すしかなかった。しかし、日本は必死に技術革新と経費削減を行って現在も世界へ車や各種製品を輸出している。
翻って中国は元切り上げに対応できるのか、との疑念が湧く。決して産業構造が柔軟でなく、しかも国営産業の非効率な残滓を引きずっている産業では国内の賃金引き上げ要求と相俟って、中国の先行きはかなり国難な荒れ道を行かなければならないのではないかと思える。
これまでは国外から移転された技術やプラントを使って生産していたが、今後は賃金の上昇圧力を生産性の向上で吸収しつつ、尚且つ元切り上げ圧力を技術革新で補わなければならない。そうした企業への忠誠と寄与努力を普通に行う慣習を中国人が持たないことも大きな問題だ。
米国が中国製品に対して懲罰的関税を実施したら中国も何らかの対抗措置を講じるかも知れないが、それはかつての日本と同じく出来ない相談だ。なぜなら中国は圧倒的な対米輸出超過状態にあるからだ。工場から吐き出される製品を米国へ売らなければ中国はたちまち在庫の山に埋もれてしまうだろう。
中国国内の元サプライが過剰なのは地方政府が勝手に地方債を発行して地方財政を膨らませていることから容易に想像できる。そうした仕組みで毎年驚異的な経済成長率を可能にしてきたのだ。しかし経済はマジックではなく、無理を重ねているとかならずネタが割れてツケが回ってくる。そのツケを払わされるのは常に国民だ。政府への信頼がなければ大きな騒動にもなりかねない綱渡りのような経済運営を中央政府は強いられることになる。