三代住めば江戸っ子だが。
外国人地方参政権問題で国内で暮らす永住外国人の政治への関与をどうするのかが問われている。世界では永住(概ね十年以上)暮らす外国人には国政への参政権を与えている国もあれば、帰化し国民としての義務(多くの場合は兵役だが)を果たした者に参政権を与えるなど国により対応は異なるが、大勢としては帰化が参政権を与える条件にしている国が多いようだ。
ただ日本の場合は周囲を海に囲まれて外国人と国民が混在している地域が割合として無視できるほど少ない。しかし世界では国と国が陸続きで同じ民族が国境線で隔てられている場合もある。たとえば豆満江で国境としている北朝鮮と中国では、北朝鮮から見れば豆満江の対岸も朝鮮だった時代もあって多くの朝鮮族が暮らしている。そのため中国が北朝鮮に肩入れしているのは朝鮮を南北に分断しているうちは大丈夫だが、統一して国力がつけばかつての歴史を持ち出して領土問題が生じるのを封じるためだという。
国家の成立の大きな要因に民族自決の原則があるが、現代ほど社会的に大勢の人が国境を越えて暮らす時代にその原則が一律に適用できない側面もある。たとえば米国は民族の坩堝と言われ様々な民族が暮らしている。日本も国際化していく度合いに応じて様々な外国人を受け入れていかざるを得ない。現在200万人を超える外国人が日本に暮らし、その6割ほどが中国人だという。
日本には兵役の義務がないため、最低限国民と外国人を分かつのは国籍の有無だけだ。その国籍を取得して日本に帰化した人を「帰化人」だといって差別するのはいかがなものだろうか。日本人も大勢の人が海外へ挑戦して外国籍を取得して外国人として活躍している。彼らがその国で「帰化人」として差別されているとしたら憤慨を感じる。
石原都知事が帰化した国会議員の名をあげつらって差別しているのは都知事という公職の立場からしていかがだろうか。ただ石原都知事は国境の島へ外国人が大挙して住み着き、地方自治体を牛耳ったら国土防衛が危うくなる、との論理まで展開しているようだ。そこまで誇大妄想を繰り広げるのなら、国防と外交は政府の専権事項としている現在の日本国政府の立場を強くする法律を作ることだ。たとえば自衛隊が部隊として移動する際は事前に当該知事へ届け出なければならない。しかし本当に日本が外国軍に侵略された場合、秘匿すべき部隊の所在場所を事前に通知するなぞという馬鹿げた法律は変えなければならない。
普天間基地移設問題で政府が地方自治体から拒否されて右往左往する事態は日本を侵略しようと企む国から見れば隙だらけの国に見えるだろう。政府の専権たる国防が地方自治体の意向の方が上回る事態が展開されているのを傍観するのみならず鳩山首相の不手際を批判しつつ、石原都知事が国会議員に帰化人が多いうんぬんの発言をするのは滑稽だ。
長崎県知事と山口県知事も普天間の負担を分担しないと政府の話を聞く前から拒否した。国防に関して政府よりも地方自治体の方が権力が上回る実例の一つだ。こうしたことが許されている世相の中で、日本政府は国家としてこの国と国民をどうやって守っていけるのだろうか。石原都知事は普天間問題で鳩山首相を批判しているが、ご自身の発言が帰化人発言と少しも矛盾していないとお思いなのだろうか。