官僚たちの沈黙はなぜか。
普通の民間企業ならコストカットのために各職域から日常的に改善案が提言されるし、経営者側も経営環境の改善に向けてまずは内部の職員に提言を求める。官僚のように天下り団体を省庁の外郭に抱えるようなことをすれば、その職員は懲戒解雇になったうえで背任横領で会社から告発される。それが民間企業では常識だが、官僚の世界ではそういうことにはなっていないようだ。
民主党政権に対して感情的ともいえる批判が多くみられるが、彼らが批判の根拠としているものは何か考えてもそれほど相手の人格を否定するかのごとく悪口雑言を浴びせることとは思えない。自民党政権とどれほど異なりどれほど悪辣なことをしたというのだろうか。民主党潰しとしか思えないマスコミの流す情報は彼らにとって叩きやすいのも確かだ。普天間基地移設問題でも沖縄県民と徳之島島民に矮小化した感情論ばかり優先させてきた。しかし、たとえ鳩山内閣を倒したところで普天間問題の何が解決するというのだろうか。論点を煽るだけで解決策を提示しようともしない、しかも沖縄県民の黄シャツの意味までも歪曲して伝えた態度はジャーナリカトとして恥ずべきだ。
そうしたなかで今日の朝刊に法務局の外郭団体「むつみ会」のことが載っていた。実に職員の7割から8割も法務局職員で構成され、法務局内部で売買される登記印紙や法務局に設置されているコピー機の運営・管理を独占的に行っている。その業務のうちコピー(一枚50円)料収入だけで年間2億円以上も利益を上げているという。
母屋は法務局で国のものだが、軒先を外郭団体「むつみ会」に貸して「むつみ会」が莫大な利益を上げる。第三者対抗要件として存在する登記法だが、実際の運用では登記簿一筆取るのに千円取られ閲覧でも一筆5百円取られる。国民が所有する不動産を法的に正当か否か、法務局で確認する手段が実に高額なのは問題だ。物件によれば筆数が何十筆にも渡るのはざらで、所有権者と土地に設定されている権利義務関係を確認作業だけで多大な出費を国民に強いている。
ことほどさように、国家財政は破綻の危機に瀕し政治家は増税圧力を国内外からひしひしと感じているのに、各省庁の危機感なき無責任さには驚く。外郭団体に甘い汁を吸わせているのも元々の原資は税金なのだと認識して節約に励もうとする心構えさえない。財政赤字が大きくなれば政治家は国民から支持を失おうと増税せざるを得ないから官僚が節約する必要はない、と思っているとしたら大問題だ。民主党は自治労などの支持を受けているというが、実際に職域代表で出ている議員の数は知れたものだ。抜本的な公務員改革をしなければ国民はギリシアの反対に民間人が暴動を起こすと心得なければならないだろう。
公務員の平均年収が700万円なのに対して、民間労働者の平均年収が460万円なのをどう思うのか。公務員の年金に当たる共済年金が月額平均30万円なのに対して、サラリーマンが受ける厚生年金の平均月額が20万円なのに官僚は何も思わないのだろうか。そして国も地方自治体も財政破綻の危機にある。
国民が時の政権に対して罵声を浴びせている間は官僚は安泰だ。事実、民主党支持率の低下によってか、事業仕訳は大した効果はなかったという論説がマスコミ各社に載りだした。
繰り返しいうが、すべて政治家が無能だとして罵詈雑言を浴びせれば少しは溜飲が下がるかもしれないが、自信を失った政治家は政策を官僚に丸投げし、かつての自民党政権下の官僚制内閣に逆戻りしてしまうだろう。確かに鳩山首相の言葉の軽さは問題だが、そうした因果関係を冷静に考えるのも必要ではないだろうか。