年金格差を放置したまま、高齢者問題を議論するのは欺瞞でしかない。
<人口減少日本で何が起こるのか――。意外なことに、多くの人がこの問題について、本当の意味で理解していない。そして、どう変わればいいのか、明確な答えを持っていない。 100万部突破の『未来の年表』シリーズの『未来のドリル』は、コロナ禍が加速させた日本の少子化の実態をありありと描き出している。この国の「社会の老化」はこんなにも進んでいた……。 ※本記事は『未来のドリル』から抜粋・編集したものです。また、本書は2021年に上梓された本であり、示されているデータは当時のものです。 2025年度以降、「70歳まで雇用の義務化」へ⁉ 本来、政府は「コロナ前」から高齢者雇用を推進させるべく、旗を振ってきたはずだ。 高年齢者雇用安定法を改正し、2021年4月から企業に70歳までの雇用機会の確保を努力義務として課した。これもしかしながら、このようなコロナ禍における高齢者雇用の悪化を見ると、前途多難と言わざるを得ない。 高年齢者雇用安定法の具体的内容は、(1)定年年齢の引き上げ、(2)定年の廃止、(3)継続雇用制度の導入、(4)継続的に業務委託契約を締結できる制度の導入、(5)継続的に社会貢献事業に従事できる制度の導入──の5つの措置のいずれかを求めるものである。 (1)~(3)はすでに、65歳までの雇用の確保で義務付けられていたものだ。企業の負担を軽減するため、グループ関連企業だけでなく、関連のない他社での雇用も認めている。それどころか、勤務してきた企業とのフリーランス契約や起業の支援といった形も選択肢としている。(5)の社会貢献事業というのは、会社や商品の歴史を説明するセミナーの講師、植林事業といった環境プロジェクトに関するボランティア活動、勤務してきた企業が関係を持つ財団法人などで働くことなどが想定されている。 厚労省の「高年齢者の雇用状況」(2020年6月1日現在)によれば、66歳以上の人が働ける制度のある企業は33.4%と3社に1社が何らかの措置を講じている。しかしながら「定年制の廃止」2.7%、「66歳以上定年」2.4%、「希望者全員66歳以上の継続雇用制度」7.5%だ。 301人以上の大企業に至ってはさらに低く、それぞれ0.6%、0.6%、3.6%に過ぎない。 政府が法改正までしてこうした現状を打破し、70歳までの就業を促進しようとする