中国の次はインドだ、と米国投資マスメディアは煽るが、本当に先進諸国はインドにハブを移すのか?

インド経済、世界一の成長エンジン狙う-28年までに中国を逆転か
· インド、28年までに世界経済最大の成長エンジン-BE基本シナリオ
· ミドルクラスが8億人にも広がる可能性、外国人投資家には魅力

 欧米各国は経済成長が鈍化している中国を経済パートナーとしてではなく、ライバルとして見なすようになっている。そして、中国に隣接するもう一つの新興大国インドが、世界の次なる経済成長のけん引役として台頭しつつある。
 インドの株式市場は活況を呈し、外国からの投資が殺到。各国政府は年齢層が若く人口14億人を抱えるインドの市場取り込みを狙い、新たな貿易協定を結ぼうと構えている。
 米ボーイングなどの航空機メーカーは記録的な受注を獲得し、米アップルはスマートフォン「iPhone」の現地生産を拡大している。
 ただ、インドの経済規模は3兆5000億ドル(約531兆円)で、17兆8000億ドル規模の中国経済にまだ遠く及ばない。劣悪な道路環境や一貫性のない教育、煩雑な官僚主義的な手続き、熟練労働者の不足は、欧米企業がインドに進出する際にぶつかる多くの問題のほんの一部に過ぎない。
 それでも、インドは世界経済の成長エンジンとして、中国を追い抜く公算が大きい。インドで近く始まる総選挙は、与党のインド人民党(BJP)が勝利すると広く見込まれている。インドに強気なバークレイズのような投資銀行は、続投が有力視されているモディ首相が次の3期目が終えるまでにインドが世界経済の成長に最も大きく貢献する国になり得ると考えている。

28年までに逆転

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)の分析はさらに楽観的で、インドは購買力平価ベースで28年までにその節目に到達できると見込む。
 ただ、そのためには、モディ首相は重要な発展4分野で野心的な目標を達成する必要がある。インフラ改善と労働者の技能強化・参加拡大、働き手全員が住めるより快適な都市の建設、雇用を提供する工場の誘致だ。
 手本はある。中国だ。1970年代後半の改革によって自国経済が世界に開放された後、中国は30年ほど年平均10%の成長を遂げた。その結果、外国資本を招き寄せ、世界で大きな影響力を持つようになった。世界的な大企業は皆、中国戦略を持たなければならなかった。
 しかし、不動産危機に、中国のサプライチェーン支配やセンシティブなテクノロジーの進歩に対する欧米の懸念増大が重なり、「奇跡」と呼ばれた中国の急成長期はもはや過去のものとなっている。
 そこでインドの出番だ。モディ政権はインド経済の競争力強化を目指しており、安価な労働力を求め中国からの事業分散を目指す欧米企業にとっては魅力的な政策だ。
 モディ首相はインドの成長加速を選挙遊説の主要なテーマとしており、昨年の集会では、政権3期目を担えばインド経済を「世界トップの地位」に引き上げると誓った。
 2025会計年度のインフラへの政府予算は5年前の3倍以上となる11兆ルピー(約20兆円)を超え、各州の支出を加えると20兆ルピーを上回る可能性がある。
 インドは30年までの6年間に鉄道や道路、港湾、水路などの重要なインフラを整備するため143兆ルピーを投資すると想定されている。
 モディ政権は一方、小麦とコメの輸出を禁止することでインフレの抑制を図っている。政府は20年代に入ると国内で製造業を奨励するため、約2兆7000億ルピーの優遇策を展開。企業は優遇税制や土地価格の引き下げに加え、州政府からも工場設置の資本を得た。
 BEの基本シナリオでは、インド経済は20年代末までに9%成長に加速する一方、中国の成長率は3.5%に低下する。インドが28年までに中国を抜いて世界経済最大の成長エンジンとなるという筋書きだ。
 今後5年のインド成長率が6.5%未満にとどまるという国際通貨基金(IMF)の予測に沿った最も悲観的なシナリオでも、インドは37年に中国の貢献度を追い抜く。
 もちろん、全ての予想は不完全な情報に依存している。可能性が極めて低いものの、いったん起これば大きな影響を及ぼす「ブラックスワン」などの大きな経済ショックがあれば、どんな見通しであれ外れ得る。

「最大の長所」
 インドの首席経済顧問V・アナンサ・ナゲスワラン氏は最近のインタビューで、中国の経済規模がはるかに大きいことから、インドと中国の比較に注意を喚起した。
 同時に、インドの潜在的な成長力や若者の多さ、インフラ構築、そして中間所得者層(ミドルクラス)が8億人にも広がる可能性は、外国人投資家にとって明確な価値命題だと主張。
「それが最大の長所だ」と述べ、「コスト競争力だけではない。市場や経済的リターンを生み出す能力、法の支配、国際的な投資家が比較的容易に資金を本国へ送金できるという政策の安定性がある」と指摘した。  
 航空など一部の分野では、インドの高い成長期待が現実のものになるとの確証が深まりつつある。
 インド最大の航空会社インディゴとエア・インディアは昨年、ボーイングと欧州のエアバスから計970機の航空機を購入するという記録的な規模の契約を交わした。インドで最も新しい航空会社アカサも今年、ボーイングにジェット機150機を発注した。
「インドではここ1年にわたり、航空史上どの新興航空会社より最も速いスピードで成長している新興航空会社が生まれている。こうした要因全てが民間航空市場に大きなチャンスをもたらしている」と話した。
 ボーイングは今年1月、インド南部ベンガルールで新しいエンジニアリングセンターを始動させた。総コスト2億ドル(約300億円)の同センターが完成すれば、同社にとって米国外で最大の投資となる。
 エコノミストらは発展を加速させる重要な要因として、新たなインフラ整備を挙げており、特に空港建設は成長押し上げの潜在力だ。昨年時点でのインドの空港数は約148と、中国と比べ100余り少ない。インドは来年までに220に増やすことを目指している>(以上「Bloomberg」より引用)




 昨年末になって、やっと中国推しが終わったと思ったら、今度はインド推しを始めるとは。投資家相手のマスメディアは損切りが終わったばかりの投資家たちにインドに投資しろと大合唱を始めた。なんとも現金な連中だと呆れるしかない。
 中国経済がおかしくなっていたのは2015年当時からだ。2015年に何があったかと云ったら、上海株式の大暴落があった。その時、中共政府は株式市場の株式売買を停止し、露骨な市場介入を行った。それは後々の自由経済を統制経済へ移行する序章だった。

 経済発展するのは自由市場が不可欠だ。統制経済がダメなのはソ連の崩壊で実証済みではないか。しかし習近平氏は成金たちが国民的な人気を博すのに嫉妬して、ジャック・マーたちを徹底的に迫害した。それでは中国経済がおかしくなるのは当たり前だ。
 そして今度はインドだ、という。その証拠にインドでは航空機が爆売れしている、とBloomberg氏は喧伝する。Bloomberg氏はインドが航空機を爆買いしていると経済爆発するインドの象徴に上げている。しかし鉄道や道路などの交通インフラが貧弱だからだ、という理由を敢えて説明しない。航空機の数が増えるのは経済発展の証の一部ではあるが、通勤する工員たちが飛行機を利用しない。もちろんサラリーマンたちが毎日の通勤に航空機を利用しない。だから航空機の数が増えることと経済成長とはそれほど緊密な関係があるとは云えない。

 インドがかつての中国のようにサプライチェーンのハブになる、とエコノミストたちは本気で考えているのだろうか。中国を「世界の工場」にして、先進自由主義諸国は手酷い裏切り行為で懲りたはずではないか。だから先進自由主義諸国は中国から投資や企業を撤退させているのではないか。
 確かにインドは独裁専制主義国家ではない。民主的な選挙が機能しているし、自由市場も機能している。しかしインドは必ずしも先進自由主義諸国と価値観を一にしているとは云えない。インドは「非同盟」を掲げて独自外交を展開している。ロシアのウクライナへの侵略侵攻に対して、先進自由主義諸国が対ロ制裁を科している最中に、インドはロシアから原油を爆買いしてきた。利があれば何でもやる国家が信頼に値するだろうか。

 さらに指摘すべきはインド社会に残る苛烈なカースト制度だ。その影響もあってか、高等教育への進学率は25%程度のままだし、上水普及率は60%台で下水の普及率は都市部で約70%農村部では30%ほどだ。社会インフラ整備が進んでいるとは云えず、インドが経済成長するための土台が完成しているとは云い難い。
 何よりも先進自由主義諸国がサプライチェーンのハブを他国に委ねることに懲りている。廉価な労働力があって多少の製造原価が引き下げられても、それに替えられない「信頼性」が本国にはある。ハブを他国へ移すことで核心的な技術が流出する危険性も中国で学んだ。一段と賢くなった先進自由主義諸国がハブをインドへ挙って移すとは思えない。



<私事ながら>
この度、歴史小説「蒼穹の涯」を出版するためにクラウドファンディングをはじめました。既に電子版では公開していますが、紙媒体でも残しておきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。ちなみに電子版の「蒼穹の涯」を読みたい方はこちらをクリックして下さい。

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