高市首相の「存立危機事態」発言は世界では「普通の発言」だ。
<高市首相の国会での「存立危機事態」発言(11月7日)に中国が反発し、日中関係が悪化している。このような状況をトランプ大統領は、どのように見ているのか。米中関係の今後を展望すると、日本の危機的状況が浮かび上がってくる。
「中国に翻弄される高市首相、中国を利し、「タカ派」イメージ崩壊する「発言撤回」はできず…見えない関係改善の方策ーー「G2」を志向するアメリカと中国、その一方との関係悪化は国益の大きな棄損」と、またしても舛添 要一(国際政治学者)氏の日中政治論評を取り上げる。
また舛添氏は「中国製造2025」が成功したかのように述べているが、果たして中国は労働集約型から技術集約型へ製造業を転換して「製造強国」になっただろうか。確かにAI、ロボット、航空宇宙、新エネルギー、新素材、海洋設備、バイオ医薬品、次世代ITなど、10の重点分野に重点投資して太陽光発電などの分野で一定の成果を上げたが、その一方で半導体など一部の分野では、当初の目標を達成できたとはいえない段階に止まっている。
出口なしの日中関係
日本製水産物の輸入停止、日本への渡航自粛、航空便の減便など、様々な分野に影響が出ている。中国は高市発言の撤回を要求しているが、日本政府はそれに応じる気はない。事態の沈静化には、時間がかかりそうである。
高市発言に関しては、政府は従来の政府見解を見直さないとして、11月25日には、「存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即して持ち得る全情報を総合して客観的かつ合理的に判断する。政府見解は完全に維持しており、見直しや再検討が必要とは考えていない」という答弁書を閣議決定している。
これは、事実上の高市発言撤回である。先の予算委員会で、高市は、「台湾とフィリピンの間の海峡が封鎖されたら、存立危機事態になるか」という岡田克也議員の質問に対して、「戦艦を使い、武力行使を伴えばどう考えても存立危機事態になり得る」と答弁したのであり、明らかに「従来の政府見解」とは乖離しているからである。
事実上の発言撤回であるが、中国はそれを認めようとはせず、中国外務省の報道官は、26日の会見で、「全く不十分だ。ごまかすような手口を使うべきではない」と批判し、あくまでも撤回を求め続けた。
しかし、高市がそれを受け入れれば、政権はもたない。高市の70%という高い支持率は、保守のタカ派、「毅然として中国に立ち向かっている」というイメージがもたらしているからである。
日中政府間で、水面下で解決の糸口を見つける努力が続けられていると思うが、高市の高支持率、習近平の国内締め付け路線を考えると、合意に至る道は険しい。
日本製水産物の輸入停止、日本への渡航自粛、航空便の減便など、様々な分野に影響が出ている。中国は高市発言の撤回を要求しているが、日本政府はそれに応じる気はない。事態の沈静化には、時間がかかりそうである。
高市発言に関しては、政府は従来の政府見解を見直さないとして、11月25日には、「存立危機事態に該当するかは、個別具体的な状況に即して持ち得る全情報を総合して客観的かつ合理的に判断する。政府見解は完全に維持しており、見直しや再検討が必要とは考えていない」という答弁書を閣議決定している。
これは、事実上の高市発言撤回である。先の予算委員会で、高市は、「台湾とフィリピンの間の海峡が封鎖されたら、存立危機事態になるか」という岡田克也議員の質問に対して、「戦艦を使い、武力行使を伴えばどう考えても存立危機事態になり得る」と答弁したのであり、明らかに「従来の政府見解」とは乖離しているからである。
事実上の発言撤回であるが、中国はそれを認めようとはせず、中国外務省の報道官は、26日の会見で、「全く不十分だ。ごまかすような手口を使うべきではない」と批判し、あくまでも撤回を求め続けた。
しかし、高市がそれを受け入れれば、政権はもたない。高市の70%という高い支持率は、保守のタカ派、「毅然として中国に立ち向かっている」というイメージがもたらしているからである。
日中政府間で、水面下で解決の糸口を見つける努力が続けられていると思うが、高市の高支持率、習近平の国内締め付け路線を考えると、合意に至る道は険しい。
米中は「G2」体制を志向、中国から見れば日本はアメリカの「従属国」
11月24日、トランプと習近平主席が電話で会談した。習近平は、台湾問題に言及して、台湾が中国の一部であることを強調し、それが「第二次世界大戦後の国際秩序で欠くことのできない一部」とした。そして、米中が共に、ファシズムや軍国主義と戦ったことを強調した。トランプは、会談後に、台湾や日本には言及せず、米中関係が良好であり、「東アジアは上手くいっている」と述べるにとどまった。
習近平は、台湾問題に関して、トランプの理解を得るように説明した模様である。中国からみれば、日本はアメリカに安全保障を依存している「格下の国」、「従属国」であり、アメリカの意向に左右されると見下している。
トランプは、来年4月に訪中するという。
韓国・慶州で行われたAPEC首脳会議にあわせて、10月30日に習近平・トランプの会談が釜山で行われたが、トランプは、これをG2と表現した。まさに、世界の覇権は、アメリカと中国との熾烈な競争下にあるということである。
その後、25日には、高市がトランプと電話会談した。トランプからの要請だという。トランプからは、習近平との電話会談の内容が伝えられたというが、会談内容の詳細は明らかにされなかった。
ウォールストリート・ジャーナルは、トランプは高市に「台湾問題に関して中国を刺激しないように」と話したと、26日に報じた(木原稔官房長官は27日の記者会見で「そのような事実はない」と否定)。
また、27日の『人民日報』は、アメリカに対して、日本の「軍国主義を復活させる行動」を阻止するように求めた。
米中、日米の電話首脳会談の詳細な内容については不明であるが、高市の頭越しに二大強国が了解し合っているような感じである。
習近平主席はトランプ大統領と電話会談した際に、高市首相を牽制するように求めた。日本は安全保障をアメリカに依存する国で、従うしかない。ウクライナ停戦をめぐって、アメリカはロシアに有利な提案をまとめた。アメリカの支援なしには戦えないウクライナは反対できない。よく似ている。
11月24日、トランプと習近平主席が電話で会談した。習近平は、台湾問題に言及して、台湾が中国の一部であることを強調し、それが「第二次世界大戦後の国際秩序で欠くことのできない一部」とした。そして、米中が共に、ファシズムや軍国主義と戦ったことを強調した。トランプは、会談後に、台湾や日本には言及せず、米中関係が良好であり、「東アジアは上手くいっている」と述べるにとどまった。
習近平は、台湾問題に関して、トランプの理解を得るように説明した模様である。中国からみれば、日本はアメリカに安全保障を依存している「格下の国」、「従属国」であり、アメリカの意向に左右されると見下している。
トランプは、来年4月に訪中するという。
韓国・慶州で行われたAPEC首脳会議にあわせて、10月30日に習近平・トランプの会談が釜山で行われたが、トランプは、これをG2と表現した。まさに、世界の覇権は、アメリカと中国との熾烈な競争下にあるということである。
その後、25日には、高市がトランプと電話会談した。トランプからの要請だという。トランプからは、習近平との電話会談の内容が伝えられたというが、会談内容の詳細は明らかにされなかった。
ウォールストリート・ジャーナルは、トランプは高市に「台湾問題に関して中国を刺激しないように」と話したと、26日に報じた(木原稔官房長官は27日の記者会見で「そのような事実はない」と否定)。
また、27日の『人民日報』は、アメリカに対して、日本の「軍国主義を復活させる行動」を阻止するように求めた。
米中、日米の電話首脳会談の詳細な内容については不明であるが、高市の頭越しに二大強国が了解し合っているような感じである。
習近平主席はトランプ大統領と電話会談した際に、高市首相を牽制するように求めた。日本は安全保障をアメリカに依存する国で、従うしかない。ウクライナ停戦をめぐって、アメリカはロシアに有利な提案をまとめた。アメリカの支援なしには戦えないウクライナは反対できない。よく似ている。
この40年で中国のGDPは60倍の成長、日本はわずか3倍
IMFの名目GDP統計によると、2025年の世界ランキングは、1位アメリカ(30,616/単位10億USドル)、2位中国(19,399)、3位ドイツ(5,0134)、4位日本(4,280)、5位インド(4,125)、6位イギリス(3,959)、7位フランス(3,362)、8位イタリア(2,544)、9位カナダ(2,284)、10位ブラジル(2,257)である。
中国は、アメリカの約3分の2の規模にまでなっており、日本の約5倍である。
1985年のランキングは、1位アメリカ(4,339/単位10億USドル)、2位日本(1,427)、3位ドイツ(663)、4位フランス(551)、5位イギリス(537)で、中国は8位(310)で、日本の5分の1であった。
それと40年後の今日を比べると、アメリカは7倍、中国は60倍に拡大しているのに、日本は3倍にしかなっていない。2010年には、中国は日本を抜いて2位になっている。中国の高成長・日本の低成長というコントラストが目立つ。
軍事力については、グローバル・ファイヤーの2025年の世界軍事力ランキングによると、1位アメリカ、2位ロシア、3位中国、4位インド、5位韓国、6位イギリス、7位フランス、8位日本、9位トルコ、10位イタリアである。
中国は、凄まじい勢いで軍備を拡張している。核兵器の数では、アメリカやロシアが約5000発を保有しているのに対し、中国600発であるが、急速に核兵器の数を増やしている。
また、通常兵器についても、航空母艦の建造など、アメリカに追いつこうとしている。空母「遼寧」と「山東」に加えて、最近3隻目の空母「福建」を就航させた。さらに、4隻目も建造することを明言しており、原子力空母になる可能性がある。
大学進学でも中国の競争は日本の比ではなく、東大をはじめ、大学院は、本国での競争を回避する中国人留学生で溢れている。アジアの大学ランキングでは、日本の大学は20位以内にいない。上位は中国の大学である。
日本の大学は、研究開発費も少なく、先端技術競争で中国に負けている。
IMFの名目GDP統計によると、2025年の世界ランキングは、1位アメリカ(30,616/単位10億USドル)、2位中国(19,399)、3位ドイツ(5,0134)、4位日本(4,280)、5位インド(4,125)、6位イギリス(3,959)、7位フランス(3,362)、8位イタリア(2,544)、9位カナダ(2,284)、10位ブラジル(2,257)である。
中国は、アメリカの約3分の2の規模にまでなっており、日本の約5倍である。
1985年のランキングは、1位アメリカ(4,339/単位10億USドル)、2位日本(1,427)、3位ドイツ(663)、4位フランス(551)、5位イギリス(537)で、中国は8位(310)で、日本の5分の1であった。
それと40年後の今日を比べると、アメリカは7倍、中国は60倍に拡大しているのに、日本は3倍にしかなっていない。2010年には、中国は日本を抜いて2位になっている。中国の高成長・日本の低成長というコントラストが目立つ。
軍事力については、グローバル・ファイヤーの2025年の世界軍事力ランキングによると、1位アメリカ、2位ロシア、3位中国、4位インド、5位韓国、6位イギリス、7位フランス、8位日本、9位トルコ、10位イタリアである。
中国は、凄まじい勢いで軍備を拡張している。核兵器の数では、アメリカやロシアが約5000発を保有しているのに対し、中国600発であるが、急速に核兵器の数を増やしている。
また、通常兵器についても、航空母艦の建造など、アメリカに追いつこうとしている。空母「遼寧」と「山東」に加えて、最近3隻目の空母「福建」を就航させた。さらに、4隻目も建造することを明言しており、原子力空母になる可能性がある。
大学進学でも中国の競争は日本の比ではなく、東大をはじめ、大学院は、本国での競争を回避する中国人留学生で溢れている。アジアの大学ランキングでは、日本の大学は20位以内にいない。上位は中国の大学である。
日本の大学は、研究開発費も少なく、先端技術競争で中国に負けている。
アメリカの力の相対的低下、トランプも覇権国の役目を自ら放棄
第二次世界大戦後の世界は、それまでのイギリスに代わって、アメリカが世界の覇権国となった。「パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)」である。しかし、トランプのアメリカ第一主義に見られるように、今のアメリカは、世界に国際公共財を提供する意欲も能力も減退している。
世界一の大国は、それなりの責任を負うが、それは自分のためでもある。自国の安全を保つために、世界中に軍隊や基地を展開する。また、世界を、そしてアメリカを繁栄させるために、自由貿易を推進する。さらには、自国の通貨ドルを基軸通貨として、世界の金融システムの円滑な作動を保証する。
「公共財」という考え方がある。安全保障、自由貿易、国際金融などは公共財とみなすことができる。つまり、「ただ乗り(free ride)」を許すということである。大国が提供する公共財に小国は「ただ乗り」しているわけであるが、それでも覇権国は寛大である。
ところが、今のトランプには、この考え方が通用しない。要するに、アメリカはかつてのような大国ではないので、他国に「ただ乗り」させる余裕はないというのである。
それが関税攻勢という発想になった。また、安全保障についても、アメリカは、同盟国に防衛費の増加を求めている。
トランプは、まさに国際公共財の提供を止めようとしているが、それは、アメリカが凋落しつつあることの証左である。
トランプは、アメリカの国際的影響力を低下させるような政策を提案している。
たとえば、トランプはUSAID(国際開発局)を解体してしまった。この組織は、東日本大震災のときにも日本に救援に駆けつけるなど、世界から高く評価されていた。
アメリカの力の源泉は、情報収集・発信能力にある。CIA(中央情報局)やDIA(アメリカ国防情報局)が機能不全に陥れば、アメリカの安全が脅かされる。ところが、トランプは、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)やRFE/RL(ラジオ・フリー・ヨーロッパ / ラジオ・リバティー)なども解体しようとしている。ロシアや中国のような権威主義国家が今なお力を持っている現状で、情報組織の解体は禍根を残す愚策である。
第二次世界大戦後の世界は、それまでのイギリスに代わって、アメリカが世界の覇権国となった。「パックス・アメリカーナ(アメリカの平和)」である。しかし、トランプのアメリカ第一主義に見られるように、今のアメリカは、世界に国際公共財を提供する意欲も能力も減退している。
世界一の大国は、それなりの責任を負うが、それは自分のためでもある。自国の安全を保つために、世界中に軍隊や基地を展開する。また、世界を、そしてアメリカを繁栄させるために、自由貿易を推進する。さらには、自国の通貨ドルを基軸通貨として、世界の金融システムの円滑な作動を保証する。
「公共財」という考え方がある。安全保障、自由貿易、国際金融などは公共財とみなすことができる。つまり、「ただ乗り(free ride)」を許すということである。大国が提供する公共財に小国は「ただ乗り」しているわけであるが、それでも覇権国は寛大である。
ところが、今のトランプには、この考え方が通用しない。要するに、アメリカはかつてのような大国ではないので、他国に「ただ乗り」させる余裕はないというのである。
それが関税攻勢という発想になった。また、安全保障についても、アメリカは、同盟国に防衛費の増加を求めている。
トランプは、まさに国際公共財の提供を止めようとしているが、それは、アメリカが凋落しつつあることの証左である。
トランプは、アメリカの国際的影響力を低下させるような政策を提案している。
たとえば、トランプはUSAID(国際開発局)を解体してしまった。この組織は、東日本大震災のときにも日本に救援に駆けつけるなど、世界から高く評価されていた。
アメリカの力の源泉は、情報収集・発信能力にある。CIA(中央情報局)やDIA(アメリカ国防情報局)が機能不全に陥れば、アメリカの安全が脅かされる。ところが、トランプは、VOA(ボイス・オブ・アメリカ)やRFE/RL(ラジオ・フリー・ヨーロッパ / ラジオ・リバティー)なども解体しようとしている。ロシアや中国のような権威主義国家が今なお力を持っている現状で、情報組織の解体は禍根を残す愚策である。
「中国製造2025」はほぼ100%達成の見込み
今年の3月5日〜11日に全人代が開かれ、今年の実質GDP成長率を「5%前後」とする目標を明らかにした。財政赤字の対GDP比を昨年目標の3%から4%前後に引き上げ、超長期特別国債の発行額を昨年の1兆元(約20兆円)から1兆3000億元に増加した。
しかし、不況の今、中国人には節約志向が高まっており、個人消費の伸びによる内需の拡大には大きな期待は持てない。5%成長は容易ではなかろう。
先端技術開発に関しては、中国の新興企業デイープシーク(DeepSeek)が開発した生成AI(人工知能)が、高性能な上に低コストで世界に大きな衝撃を与えた。
アメリカから締め出しを食らった中国企業は、独自の努力で困難を克服し、再生を図っている。その典型は華為(ファーウェイ)で、同社の北京の拠点を私も視察したが、みごとに復活し、世界最高水準のスマホの開発に成功したり、自動車産業に進出したりしている。
ディープシークも同様で、アメリカの対中規制によって、生成AIの開発に必要なエヌビディアの最新半導体が入手できない状況になったため、既存のAIモデルが出力するデータを使う「蒸留」という手法で、新たな生成AIを創った。
まさに、アメリカの規制を梃子(てこ)にして、中国は先端技術開発で長足の進歩を遂げている。中国政府が2015年に策定したハイテク振興計画である「中国製造2025」は、ほぼ100%計画を実現するようである。
その他、EVやドローンの分野でも、日本の先を走っている。
アメリカの関税攻勢に関しては、中国は、レアアースの輸出規制などの対抗手段でアメリカを屈服させている。11月24日の米中電話首脳会談でも、トランプは習近平にアメリカ産の農産物に輸入拡大を求め、習近平はそれに同意したという。中国が輸入を制限すれば、苦境に立つアメリカの農民は多い。来年の中間選挙を控えて、トランプは中国に頭を下げるのである。このように、関税は、中国にはあまり効果を持たない。
米中間の覇権競争の狭間で、日本はどのような舵取りをしていくのか。高市は、この問題の深刻さを認識しているのであろうか。>(以上「JB press」より引用)
今年の3月5日〜11日に全人代が開かれ、今年の実質GDP成長率を「5%前後」とする目標を明らかにした。財政赤字の対GDP比を昨年目標の3%から4%前後に引き上げ、超長期特別国債の発行額を昨年の1兆元(約20兆円)から1兆3000億元に増加した。
しかし、不況の今、中国人には節約志向が高まっており、個人消費の伸びによる内需の拡大には大きな期待は持てない。5%成長は容易ではなかろう。
先端技術開発に関しては、中国の新興企業デイープシーク(DeepSeek)が開発した生成AI(人工知能)が、高性能な上に低コストで世界に大きな衝撃を与えた。
アメリカから締め出しを食らった中国企業は、独自の努力で困難を克服し、再生を図っている。その典型は華為(ファーウェイ)で、同社の北京の拠点を私も視察したが、みごとに復活し、世界最高水準のスマホの開発に成功したり、自動車産業に進出したりしている。
ディープシークも同様で、アメリカの対中規制によって、生成AIの開発に必要なエヌビディアの最新半導体が入手できない状況になったため、既存のAIモデルが出力するデータを使う「蒸留」という手法で、新たな生成AIを創った。
まさに、アメリカの規制を梃子(てこ)にして、中国は先端技術開発で長足の進歩を遂げている。中国政府が2015年に策定したハイテク振興計画である「中国製造2025」は、ほぼ100%計画を実現するようである。
その他、EVやドローンの分野でも、日本の先を走っている。
アメリカの関税攻勢に関しては、中国は、レアアースの輸出規制などの対抗手段でアメリカを屈服させている。11月24日の米中電話首脳会談でも、トランプは習近平にアメリカ産の農産物に輸入拡大を求め、習近平はそれに同意したという。中国が輸入を制限すれば、苦境に立つアメリカの農民は多い。来年の中間選挙を控えて、トランプは中国に頭を下げるのである。このように、関税は、中国にはあまり効果を持たない。
米中間の覇権競争の狭間で、日本はどのような舵取りをしていくのか。高市は、この問題の深刻さを認識しているのであろうか。>(以上「JB press」より引用)
「中国に翻弄される高市首相、中国を利し、「タカ派」イメージ崩壊する「発言撤回」はできず…見えない関係改善の方策ーー「G2」を志向するアメリカと中国、その一方との関係悪化は国益の大きな棄損」と、またしても舛添 要一(国際政治学者)氏の日中政治論評を取り上げる。
この題にしてから、舛添氏の勘違いが如実に散りばめられている。まず「中国に翻弄される高市首相」からして間違いだ。高市氏の「存立危機事態」発言は国際的に見れば極めて常識的な発言でしかなく、それに異常反応した中共政府の方がどうかしている。大阪総領事の書き込みは論外だが、それを叱責するでもなく油を注いだ習近平氏の国際政治感覚のなさは絶望的だ。
なぜ中国が高市氏の「存立危機事態」発言に異常反応した理由は、1月に米シンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)が中国による台湾への軍事侵攻をシミュレーションした結果にある。図上演習といえども、台湾進攻に際して中国軍と台湾-米軍が戦った場合は殆ど優劣つけがたい接戦になる。しかし日本が米軍支援に回ると中国軍が敗れる、との結果が出ている。
つまり高市氏の「存立危機事態」発言を中共政府は決して聞きたくなかった。従来の日本政府は公明党の意を汲んで曖昧にぼかして来たが、高市氏は岡田氏の執拗な追及があったとはいえ、「総合的に判断する」と明言してしまった。その一言で習近平氏の台湾統一戦略は崩れ去った。
次に舛添氏は「(高市氏は)「タカ派」イメージ崩壊する「発言撤回」はできず」と書いているが、高市氏は「タカ派」発言はしていないし、また「発言撤回」をする必要もない。なぜなら困っているのは中国側であって、日本ではないからだ。WSJの記事を引用して日本のオールドメディアが「トランプ氏は電話で中国を刺激しないように」と発言したかのようなことが報じられているが、それこそフェイク・ニュースだ。
繰り返すが、今回の日中対立で困っているのは中国であって、日本ではない。習近平氏が切った外交カードは悉く外れた。だから中国側から「この程度で許してやる」と吉本新喜劇並みのお笑いを演じている。
また米国が中国と「G2」を志向している、というのも間違いだ。かつて習近平氏が親中派のオバマ大統領に「太平洋を東西で分けて、世界覇権を東西で二分しよう」と提案して、オバマ大統領の怒りを買ったことがある。誇り高いトランプ氏が中国とG2を想定するなどトンチンカンもいいところだ。舛添氏は米国連邦議会で「台湾保障実施法」が成立したのをご存知ないのだろうか。
トランプ氏は米国機密文書「一九九二年二月十八日付けで作成されたとされる「FY 94-99 Defense Planning Guidance」を公開することによって、米国が日本とドイツを支配する世界戦略を否定し、日本にはアジアのリーダーとしての役割を期待し、ドイツには欧州のリーダーとしての役割を期待する、という方針に切り替えたと推測する。だからこそ、トランプ氏は高市氏の「普通の国・日本」の首相の誕生を大歓迎したのだ。
舛添氏は日本政府に米中を天秤に掛けた「蝙蝠外交」を勧めているようだが、これまで中国を散々支援して来て、何か良いことがあっただろうか。中国は日本の資金と工業技術の支援があって、高度経済成長を果たすことが出来たにも拘わらず、経済成長の成果を軍備拡張に注ぎ込んで日本を敵国として恫喝するなど言語道断ではないだろうか。
しかも「一帯一路」や「新シルクロード」等と称して、アジア・アフリカの後進国を「債務の罠」に嵌めて、港湾や空港を取り上げる様は経済侵略と批判されても仕方のないものだ。そうした中国の国家戦略は日本の国家戦略と決定的に相容れないものだ。中共政府の中国と日本が手を組むことなどあってはならない。
ことに半導体製造では殆ど独自では何も作れない段階のまま止まっている。11月20日に高市氏が対中半導体制裁にサインして中国の半導体製造に必要な材料供給が止まり、中国内では大騒ぎになっているのがその証拠だ。
今回の制裁に関して舛添氏は中国のヌルイ理由が分からないようだ。かつて2010年の尖閣諸島国有化の時に対日制裁として実行したレアアース規制や邦人企業に対する「打ち壊し」官製暴動が起きていないことに気が付かないのだろうか。それはレアアース規制が対日制裁として有効なカードでなくなっているからだ。そして邦人企業に対する官製暴動が起きないのも、邦人企業がこれ以上中国から撤退しては困るからだ。現在、中国で邦人企業が約3万1千社ほど操業しているが、一社当たり約千人もの中国人を雇用している。そのため邦人企業がすべて撤退すると中国人が3千万人失業することになる。それは労働者の約10%に相当し、現在中国当局発表で10%の失業率が倍に跳ね上がるからだ。
中国と関係が悪化して、日本が困るようなことが何かあるだろうか。確かに一部薬剤の原料は中国に依存しているが、その薬剤原料がなくなれば日本が深刻な事態に陥る、というものでもない。経済交流をしていれば、また何かの切っ掛けで「経済制裁」を課されるか分かったものではない。そんな国際常識の通用しない国と共依存することなど、日本の不安定化に寄与するだけだ。
中国に進出した邦人企業が中国の雇用だけでなく、中国の輸出にも寄与していることを考慮すれば、速やかに邦人企業は日本国内にUターンさせるべきだ。そのための「企業投資減税」措置法を制定して、高市政権は国内製造を強化すべきだ。何かにつけて日本の国家と国民を脅す隣国とのおつきあいは「敬遠」しようではないか。つまり「敬って遠ざける」ことだ。そして信頼できる国との交流こそ促進すべきだ。